今日という日に

絶耐糖度

今日という日に

  私は希望。今年中学生になった女の子です。趣味は数学でいつも紙と睨めっこしてます。今はお父さんとお手伝い榊さんが、私の家族です。仕事で地球を離れたお父さんと、別れたばかりで少し寂しいです。でもいつまでも落ちこんでなんかいられません。だって今日は待ちに待った日なんですから。

 〜


 「希望ちゃん、ついに今年もこの日がやってきましたね。」


 榊さんが言っている「この日」が昔、日本という国にあったイベントじゃないってわかってます。私は古いイベントには興味無いのでよくは知りませんが、それとは別に大事な日なんです。

 

 「うん、今年こそ何か手掛かりがつかめるといいけど…」


 実は私のお母さんは、有名な数学者でもありました。そのお母さんの誕生日が今日で、同時に世界アリスメティクス-フェスティバル(アリフェス)の日でもでもあるんです。


 「大丈夫ですよ、希望ちゃん。希さんが何らかの仕掛けをしていることは明確でした。ならばいずれわかるはずですよ。」


 「榊さんは何か知らないの?お母さんにあったことがあるなら聞いててもおかしくないのに。」


 「残念ながら、わたしはきいていませんね。でも先輩なら何か知っているかもしれませんが…」

 

 「ふうん、見つけるまで内緒ってわけか。楽しいじゃない、すぐにみつけようね。あ、もうすぐフェスが始まっちゃう。」


 私は毎回出ていますが、予選までしか行けません。でも難しい問題が解けた時はとても気持ちがいいです。だから私はずっと数学を続けています。


「わたしは外で待っていますね。全力を尽くしてきてください。」

 

 私は中学一年生なので、まだ三角関数や微積程度までしか分かりません、それでもお母さんが好きだった数学が、奥の深いものであるとよく分かります。それに私がアリフェスに出るのには、もうひとつ理由があります。お母さんが運営に関わっていた事です。このフェスにはきっと、なにか秘密があるんです。だってお母さんは自分の誕生日に数学のお祭りを開くように仕向け、それに私が参加するように、お父さんと榊さんにそれとなく私が数学好きになるようにさせたんです。何かあるに決まっているとおもいませんか?

 でも毎年それを楽しみにしているのは私だけなんです。だって私しか知ってるひとがいないんですもん。

 

 〜

 

 私は数学がとても出来るという訳ではありません。出来るのは、解法を思いついたり考えてどうにか答えにたどり着く為に、必死に頭を回すだけです。でもその過程が楽しいんです。解けなくても、考えてる最中が一番いいんです。

 

 「行ってきます。」


 〜

 

 「はぁ~」

 

 今回もあまり解けなかったな。少し落ちこんでいます。でも楽しかったです。特に最後に解いた問題。色んな数学的技法が混ざっていて、全ての知識が無いと解けない問題だったんです。けど私一つだけ忘れていて、このままじゃ解けないって思ったんです。

 

 「まあまあ、希望ちゃん。地球中の人が、特にその中でも数学を専門とする人が好き好んでするものですよ。中学生でここまでできるのは普通じゃありえません。誇っていいと、わたしはおもいますけどね。」


 「だって…、でも、うんそうだね。私は問題を解いて楽しんだし、重要なことは他にある!」


 「ところで、希さんの例の暗号は解けたんですか?」


 例の暗号とは、以前お父さんから渡されたお母さんのペンダントのことです。暗号だと気付いたのは最近で、中のギアがクルタ計算機みたいのになっているみたいでした。


 「うん、今朝あれの答えが日付になってたんだ。それまではただの記号だったのに。でもそれ以外もあって…ただそれが何を表すのかがわからなくって。」


 「みせてくれますか?15桁、なんでしょうか。でもこの数値、5桁ずつ別の式の解なんですよね。5桁が3つ……。」


 3桁。無理やりくっつけても日付にもならなかったのに。なら答えは簡単です。


 「てことは座標?でもどこが基準なんだろう。今日に関係するんだからフェスの会場かな。」


 「そういえば、希望ちゃん。以前先輩が教えてくれたんですけどね、家の地下に倉庫がありますよ。古い研究室を改装したものらしいですけど、確か中央の地面に何かが書いてありました。その時は気にも留めなかったんですけど、もしかして…?」


 「行ってみましょ!きっとお母さんが何か、私たちへメッセージを残してるんだわ。お母さんの誕生日でお母さんがこの日に設定したフェスに関係があるのかはわからないけど。」


 ~


 地下室にあったのは古いオプティカルスクリーンでした。でもこれどう使うんでしょう。


 「これの使い方、わかる?」


 「さすがにわたしにもわかりませんね。」


 「う~ん。適当に触ってどうにかなるかな。あれ?スイッチは...」


 ボタンを順番に押していると。ブウウン。パチンっ。


 真っ白い画面がうかびあがって、チカチカしていました。


 「えっ?ついた、の?」


 「今見ているのは希望かしら。今頃もう何歳かしらね。今から言うことは本当の事だから、驚かないでね。一度しか言わないからしっかり聞くこと。私は命を狙われてるの。誰に側まだわからない。けどきっともうすぐにでも、私は消されるわ。だからどうか地下室の隠し扉から、私の研究室に入って、中にある機械をぜんぶこわして。お願いね。それと、榊さんがいたらだけど、彼、止めてくれる?絶対になにかするから。きっと私の敵討ちだとか、研究の続きだとか。あの人と希望を守ってね。そのための、あなただから。」


 ピッ。


 「えっ。まって、お母さん!どういうこと?消されるって?こんなメッセージって...」

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