接近! 天狗の素顔 天狗の正体《中編》
翌日の午前10時30分
雪乃さんと合流する前に
『憩いの場天狗』を窓の外側からコッソリと
覗いてみると
「いたいた。」
天狗さんと紅美ちゃんが働いてるのを確認
「よし、これなら見つからずに部屋に入れる。」
待ち合わせの場所は、雪乃さんのマンションの前で、彼女は既に青い作業着を着て待っていた。
「大丈夫です。
2人とも店にいました。」
ジェスチャーでOKサインを出すと早速、天狗さんの部屋へ
ハイツホンマ 202号室の扉の前
雪乃さんは、手にした黒い袋から鍵を解錠する
ピッキングを取り出すと、それを使い2~3分で扉の鍵を器用に開ける。
けど…この人、なんでこんなこと出来るの?
それに何で作業着を着ているのか聞いてみると
「この格好だと、鍵の業者に見えるから怪しまれないでしょ。」
抜け目が無い答えに感心しちゃうけど…
この人、ここに来る前って一体何してたの?
扉を開けて、雪乃さんが先に入り
「お邪魔しま~す。」
と律儀に挨拶をしながら僕も続く。
部屋の中は薄暗く、窓にはすだれが掛かって、
太陽の光を遮っている。
壁全体は本棚
寝室の扉の左右には等身大の金剛力士像の
阿形と吽形が立っていて
「なにこれ?」
と雪乃さんは驚く。
僕は壁の本棚を見て
「それにしても凄い量の本ですね。」
と感心する。
以前は古書集めが趣味だと言ってたけど、
それにしても何冊あるんだ?
雪乃さんはその本棚を眺めて
「意外ね、エロ本と漫画が無いわね。」
……。
居間には他に大して見るものが無くて、次は
寝室なんだけど…。
扉の前の金剛力士像が、僕達を見張っている
ようで恐い。
それでも、戸をゆっくり開けて覗いてみると、部屋全体が赤いな?
目を凝らして、よく見てみると無数の顔が僕を見ているではないか!
「ギャーーアーーー!」
「バカ小僧、声でかい。」
雪乃さんが僕の口を押さえる。
あー、ビックリした。
何故ビックリしたかと言うと、壁全体と天井が
天狗のお面で埋め尽くされて不気味
そして気持ち悪い。
部屋全体が赤くて落ち着かない。
「こんな部屋で寝れるのか?」
雪乃さんも大量の天狗面を見て
「あの天狗、初めて見たときからキ◯ガ◯
だと思ったけれど…
やっぱり本物だったわね。」
気持ちは分かるけど言うことが酷いな。
天狗面以外は、畳んである布団と折り畳みの机、その上にノートパソコンがあるだけ
「そうだ、天狗さんのパソコンにはリョウさんに似た人のエッチな画像がいっぱい入っているって、紅美ちゃん言ってたな。」
なんて無意識に口にしたら
「あら、天狗って
あの娘がタイプなの?」
あっ、余計な事言っちゃったかな。
雪乃さんは面白そうね、と勝手にパソコンを
開いて、いじりだす。
「小僧、天狗が思いつきそうなパスワード
考えなさいよ。
アンタも見たいでしょ。」
「いえ、そこまでして見たくないですよ。」
「天狗だから10(テン)と9(グ)かしらね。」
雪乃さんはパスワードを解錠出来なくて、
手こずっていると玄関の方から ガチャ と
扉の開く音が聞こえてきた。
ヤバイ!天狗さんが帰ってきた?
慌てて押し入れを開けると、幸い中には何も
入ってなかったので隠れる僕と雪乃さん。
ドキドキする心臓が喉の奥から出てくるのではと思うくらい緊張
そして、部屋に誰かが入って来る!
押し入れの戸を少しだけ開けて覗いてみると
紅美ちゃん?!
今は、『憩いの場天狗』で働いてる時間だよな。
メイド服、着てるし
「あれー?パソコンつけっぱなし」
電源を切るのかなと思ったら
パソコンを勝手に見て何かチェックをしている様子
「天狗ちゃん、またこんなのいれてー。」
と不満?を言って立ち上がると
「メイドの紅美ちゃん可愛いぞ♪」
スマホを取り出し歌いながらポーズを決めて
カシャ! と自撮り
色々なポーズで、カシャ カシャ!
「たまらず欲情天狗ちゃん♪」
なんですと、それはいけません!
彼女の良からぬ歌詞に心の中でツッコミを入れる。
そして10枚位は写したのかな
スマホをパソコンに繋げて
「余計な画像は消しちゃって、
紅美でいっぱいいっぱい♪」
自作の歌を歌いながらエロ画像?を無慈悲に
消して、自撮りした自分の写真をパソコンに
送ると
「これでよし!」
パソコンを閉じて部屋から出て行った。
紅美ちゃんが部屋に来てから出るまでの間
20分位は押し入れで身を潜めていたかな
「紅美ちゃん…何やってるの?」
好意故の行動なのだろうけど
歌を歌って自撮りする自体は可愛いけど
…なんか怖い。
「あの天狗って、あそこまで紅美ちゃんに好かれてる訳?」
羨ましそうに呟く雪乃さん
僕は怖いと思ったけど
考えようには好きな人にあそこまで好意を
持たれたら本望かも
「これはもう決まりね。
天狗の顔を見るだけでは済まないわ。」
「どうするんですか?」
「奴の寝ている素顔を激写して、
『ルー デ フォルテューヌ』に晒すわ。」
そこまでしなくてもと思ったけど、変に止めて面倒な事になっても嫌だから、黙っている事にした。
部屋の様子も分かったので、今夜決行することに決めた。
「それじゃあ、後でね。」
僕と雪乃さんは一旦別れて家に帰った。
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