第92話氷の女王と気づけば

2人ともス☆バで飲み終わったカップをゴミ箱に入れる。


「つぎはどこ行く?」


露の提案に雫は思いついたように返す。


「そうね……なら、服を見に行きましょう。せっかくの女子同士、きっと楽しいわ」

「そうね。いいわ行きましょう」


露ももちろんと言うように返し、ショッピングモールの地図を見る。


「ええーと、ここが3階だから……」


今いるのは3階。ここには携帯ショップや、本屋、フードコートなど色々なものがあるが、洋服店が並んでいるのはひとつ上の4階だ。


「4階ね。エスカレーターで行きましょう。そっちの方が早いわ」


すぐそこにエスカレーターを見つけた雫が言う。


「よし、それじゃまずはコニクロからね」

「最近冷えるし、ヒートテックが欲しわね」


まずはエスカレーターを上がった目の前にあるコニクロに行くことにする。


店内に入るとたくさんのお客さんがいて、皆目当てはヒートテックや、フリースなど最近肌寒くなってきていることに伴う冬物コーナーにいる。


もちろん、雫と露もそれが目当てなので冬物レディースコーナーにいる。


「どれにする?」

「そうね。パジャマが夏用しか買ってないからとりあえず冬物が欲しいわ」

「そういえば、雫、まだ夏物きてたね」


前に黒兎と買いに来た時は夏物のパジャマそして、洋服も夏物しか買っていないため是非、今回で調達したいものだ。


とりあえず、2人は3着づつほどヒートテックとフリースを2着カゴに入れる。


レジに向かう途中露はひとつ思いつく。


「そうだ!黒兎にも買っていかない?ヒートテックもなさそうだけど、それよりフリースよね。最近冷えるし」

「そうね。風邪をひかれては困るわ。何せご飯が食べられないもの」


雫はそうは言いながらも実際は黒兎が風邪をひくことを単純に心配している。


もう、好意なんてバレているから素直になればいいものを。


「ははっ、はー。おかしい。まぁそうね。雫ご飯食べられなくなるもんね。もう黒兎の料理じゃないと食べられないーって感じ?」


露はからかうように笑う。


「ね、姉さん!」


雫はムスッと怒ったように頬を膨らませる。


「ごめんごめん」


露は雫の頭をそっと撫でる。

まだ雫の頬は膨れたままだ。


そんなあまりにも微笑ましすぎて浄化されそうな光景に周りにいた同年代位の男子達は釘付けだ。


黒兎のフリースとヒートテックもカゴに入れレジを通す。


とりあえず、部屋着と肌着問題が解決したのでつぎは洋服店だ。


「自ー由ー寄る?雫の洋服買わなきゃだし」


露はコニクロから少し歩いたところに見える自ー由ーという洋服店を指さす。


「ええ、そうね。行きましょう。姉さん私の服を選んで欲しいのだけど」

「どして?」

「センスないらしいから……」

「あー……」


何となく察したように露は苦笑いしながらいいよ。と快く引き受ける。


「黒兎もびっくりするくらい、可愛いくしてあげるわ」


自信ありげに露はえへんと、胸を張る。


「けど、姉さん、そんなことをしたら私の手助けにならないかしら?」


雫は今も一応、露とは休戦中ということを気にしているようだ。


「なーに、大丈夫。いくら雫を可愛くしても、私、負けるつもりないもの。それとも雫

はちょっと可愛くなったら私に勝てるとでも?」


露は挑発するように雫に言う。


「……。ええ、そうね。少し可愛くなれば十分勝てると思っているわ」


雫は自信ありげに答えた。


「やっぱ、そうじゃないと。それにそうと決まれば可愛いくしてあげるわ!」


雫の返事が気に入ったのか露は雫の手を引き洋服店に向かっていく。


洋服店ではまずは冬物を見る。


雫の要望としては、パーカーがひとつあとはおまかせだ。


パーカーの理由としては、単純に楽で上から羽織るものが欲しいからだ。


露はその要望を聞くと、服を選びに行ってしまった。


1人になり、あてもなくさまよう雫はふと思い出す。


(そういえば黒兎と服を選んだ時もこんな感じで結局黒兎に選んでもらったかしら。あの時の私を思えば恥ずかしいほどに素直じゃなかったわ)


と、今もさほど素直じゃやい雫は昔の自分に赤面する。


「持ってきたよー」


露がそう言い持ってきたのは、ちょうどコラボしていた有名スポーツ店とのコラボパーカーと灰色のニット帽、少し大きめの青いシャツ、ジーンズ生地のズボンだ。


全体的に服は大きめのダボッとしている。


「これ、似合うかしら?」

「まあまあ、来てみなさいよ」


露に言われるがままに試着室で着替える。


「こ、これでどうかしら?」


試着室から出た雫を見て露は顔をしかめる。


「違う」

「ね、ね、姉さん」


露はそう言うと雫をもう一度試着に入れ、露も一緒に入り少し着こなしの修正が加えられた。


「ど、どうかしら?」

「鏡見たら?」


雫は恐る恐る見ないようにしていた鏡をみる。


「す、すごい」


雫の反応に満足気な露。


「なんというか、イケイケな女子高生って感じね。それにKーPOPぽい?」

「そそ、最近流行りのねー。それに可愛いし、雫のクールな感じもあってかっこいいでしょ?」

「ええ、驚いた」


露は満足気な笑顔を見せる。


「ところで姉さんは何を買うのかしら?」

「私?もう買った」


露はもう会計の終わった袋を見せる。


「行動早いねの」

「まあ、行動力の固まりみないなもんですから」


雫は服をレジに通す。


「つぎはコスメ見に行くぞー!」

「ちょ、ちょ、姉さん。テンション上がりすぎよ」

「なんだか乗ってきたー!どんどん行こう!」

「姉さん!」


そんな2人のデートは気づけば過ぎ去っているほどに充実していた。







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