第34話氷の女王と林間学校2日目1
「起きろー!」
「起きろよ黒っち!」
「うんん?うん」
「しゃーない」
「そうだなやるか」
パァーンと乾いた音が部屋に響く。
「起きろ時間だ!」
今日は林間学校2日目。昨日ふて寝して聡達よりも早く寝たのにも関わらず、普段の自堕落さと、運動のしなさの影響で最後まで寝ていたのは黒兎だった。
黒兎は左頬がジーン赤く、痛んでいるのを確認して今、叩き起されたことを理解する。文字通り。
「何寝ぼけてんだ?もう起床時間だぞ。」
「ほらほら、行くぞ飯」
「うえ?もうそんな時間かよ?」
「1番先に寝て1番後に起きるとか、普段どんだけ自堕落な生活してんだよ」
「あ?普段はもっと早えーよ。冬矢起こさないといけないし、飯も作らなきゃだし」
「はいはい、ノロケはいいから」
「ノロケじゃねえ!」
適当に朝の会話を済ましたところで段々と寝ぼけた頭も体も起きてきた。
すぐに歯を磨いて、着崩れたパジャマをなおして食堂へ向かう。
そこにはもう、冬矢達や他のクラスメイト、学年の仲間達が集まっていた。
「あら、月影くん達は随分とおそかったのね」
「そうだよ雫さん!黒兎が1番先に寝て1番後に起きるとかどう思うます?」
「あら?月影くんが1番後に起きるなんて珍しいわね。いつもはもう少し早くに起きているのに」
「なんだよ、雫さんもノロケかよ」
「ノロケでは無いわ。事実よ」
朝からなかなかの辛口塩対応が炸裂したところで、今日の朝ごはんは、味噌汁、ご飯、梅干し、焼き鮭、サラダだ。
皆、お盆を持ち食堂のおばちゃんに挨拶してそれぞれご飯を貰っていく。
黒兎達と雫達は一緒に朝食を食べることにした。
「よっこらしょっと」
「もう、聡、情けない声出さないの」
「悪ぃ悪ぃ」
「ほら、聡、ご飯ついてるよ」
「ん?ほんとだありがとう咲良」
「咲良ほら、梅干しちゃんと食えよ。好き嫌いはダメだぞ」
「えーー?だって梅干し苦手なんだもん。聡にあげるよ。ほら、あーーん……」
まあ、朝食にしては重くて、甘ったる過ぎて、見ているだけでお腹いっぱいになるような状況なわけで。
「えっと…みんな?、ちょっと私たちのこと見すぎじゃない?…わかるよ。私たちが悪いのは。だから!そんな目で見ないでー!」
そんな状況になるといつもの様に咲良が恥ずかしさで爆破する訳で。
「…さあ、ちょっと朝食にしては重くて甘ったるいことになっているが、さっさと食って昼の自由時間遊ぶぞ」
「そうね、月影くん。」
「ああ、そうだな」
「私もそうするかなー…」
「「「「だから!2人はそのままでいいからね」」」」
「ちょっとみんなー!」
「あれ?黒っちらどうしたんだ?」
色んな意味でお腹いっぱいになった朝食を取れば、次は夕方までの自由時間だ。
夕方になるとカレーを作り、その後お風呂そして、キャンプファイヤーだ。
「キャンプファイヤーで一緒にいた2人は結ばれるってマジ?」
「そんなラブコメ漫画みたいな事あるわけねぇだろ」
陽は意外とそういう迷信を信じるタイプの人間だ。というか、信じて見るのも面白いと思っている。
勿論、黒兎は信じることすらしない。
「まあ、俺たちはそんなこと無くても一生結ばれたまんまだもんなー咲良」
「うん。そうだ…ね多分」
咲良と聡のバカップルが炸裂しそうになったところで咲良は誤魔化すように多分と付ける。
「あのー咲良?それ、誤魔化し切れてないように思うなー」
「うひっ!」
あえて触れなかった所に優心が触れれば咲良は美少女に似合わない変な声を出してしまう。
「ほら、それより自由時間。何するんだ?」
「まあ、一般的には、この山の中にあるアスレチックで遊ぶというのがメジャーみたいね」
雫が手に持つ地図を広げて言う。
「へー、雫は詳しいんだね」
「うん。感心しちゃった」
「そんなこと無いわよ…」
咲良と優心にそんなこと言われちょっと照れている雫を見ると黒兎は、表情も出てきて成長したなぁと思いつつ雫が林間学校を楽しみにしてくれていることがとても嬉しかった。
「冬矢も林間学校楽しみにしてくれててなんか嬉しいよ」
「そんなこと…ないわよ」
黒兎がそんなことを言うと今度はもっと照れたように答えてくる。
この林間学校で雫はかなり成長している。
まだ、このメンバー以外だとほとんど感情を見せることはないが、それでもこのメンバーなら、感情を見せるようになっている。
「よし!じゃアスレチック行くぞー」
「アスレチックまで結構距離ある?」
「そこそこ?」
「まあ、それも運動だ!」
「月影くん」
「なんだ?冬矢」
「歩くのだるいわ、おぶってくれないかしら」
「そんなんでアスレチック行けんのかよ」
「ダメかもしれないわ」
「なんでアスレチック行こうって言ったんだよ!」
「だって、皆も楽しめるかなって思ったのよ」
そんなこと言われればおぶってやらないといけないじゃないかと、仕方なく、少しだけおぶってやった。
「なあなあ咲良」
「何?」
「雫さんってもしかして悪魔?」
「そうかもね」
背負われている雫の顔は常にイタズラな笑みのようなものを見せていたという。
「でも、そんなイタズラするくらい黒兎を信用してるんだよ。私たちでもあんなことしないもん」
「やっぱあの2人お似合いだよな」
「ほんとにね」
そんなことともつゆしらず、黒兎は雫を背負って山を昇る。
「月影くん、そろそろ下ろしてくれてもいいわ。あまり迷惑をかけてもいけないし、それに、ここから人も多いわ。私とあなたがあまりベタベタしているのを見られるのはよくないでしょう?」
「おう、そうだな。いや重かったよ」
その直後、黒兎は雫になかなかの勢いで蹴られたという。
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