第2話氷の女王はお城を所望
ええっーーーー!!
雫が家出少女だと言って驚きのあまりなかなかの近所迷惑レベルで叫ぶ。周りは割と住宅街なのである。
「今、なんて?」
「私は家出してきた」
「家出!?何があったか知らないが今すぐ帰って親に謝れよ」
「えっ?嫌」
「嫌じゃねぇよ、子供にじゃねぇんだから親と話し合いぐらいしようとしろよ!」
「嫌なんだが」
「なんでそこまで嫌がるんだよ。何があったんだよ」
「…パパとママは私をいらないと言った」
「えっ?どうして?」
「私は、パパとママの子供ではない」
「………」
その後雫のこれまでの生い立ちを聞いた。
雫の両親が、有名な議員さんだということ、そして雫は父親の不倫相手の子供だということ。
スキャンダルで自分の議員としての地位を危ぶんだ父親は雫を育児放棄、母親は、シングルマザーで雫を育てることが出来ず、雫に「あんたなんかいらない」と言ったそうだ。
それから雫は、母親の親戚に預けられ、そこでは不倫で、できた子供ということであまりいい環境ではなかったという。
その後高校からは1人で暮らせと 家を追い出され、今までなんとかもらったお金で生きていたという。
お風呂は銭湯で、寝る場はその場しのぎで、最近はお金も尽きてきてここ数日食べ物を食べていなかったという。
学校費は母親の親戚が高校になったら家を出るという約束で高校までは払ってくれていたという。
しかし驚いたのは、そんな辛い過去を雫は淡々とただそこにカンペを棒読みするように、冷たく、感情のない声で語っていることだ。
そして気づく。これは自分の心が潰されないように、心が折れないようにするために感情を無くし、人と深く関わることをやめ氷の女王になったんだと。
「今日、泊まるか?」
俺は雫に問う。
「……」
「ヘタレだからなにもしねぇって」
「…………」
「今日だけ泊めてやる」
「…嫌」
「んじゃ帰りな」
まぁ、本人が嫌がるやなら無理強いすることはない。黒兎もお節介を焼きすぎた。
「…嫌」
「何が」
「………今日だけじゃなくてこれから泊めて欲しい」
「え?」
「あなたの家に住まして欲しい」
「えっ?それって犯罪とかならない?」
「私は帰るところが無い。親も私を探してない。だから犯罪とかにはならない。居候みたいな感じでいい」
帰るところが無いと言われ俺は少し悲しい思いになる。黒兎の親はたにしかに殆ど帰らないが帰る家を用意してくれたり、すごく俺の事を心配してくれる子供思いのいい親だ。しかし雫はそんな風に思ったことはないだろう。
さっきまで淡々と喋っていた雫が、俺の家に泊めて欲しいと言った時は少し言葉に感情があった。
悲しい思いに、辛い思い、そして少し希望を見つけたような声で頼まれると断りきれなくなってしまった。
「俺が言い出したことだし泊めてやるでも、ずっとはさすがに無理だからまずは1年間、お前が住むところを見つけるまでだ。だからお前もバイトしたりなんなりで何とかマンションかなんかを借りろ 」
「マンションは親の承諾がいる。でも私はたぶん承諾してくれない」
「んじゃ俺の親が俺名義で借りる。俺の親にも事情は話ておく」
「……うん」
「だからそれまでだ。高校生の間だけ俺たちが面倒をある程度みる。帰るところもないんだろいいから甘えとけ」
「……………うん。ありがとう」
黒兎の親は優しいので事情さえ話せば快く承諾してくれるだろう。
また少し声に感情が宿る。もう雫は十分苦労した。少しくらいなら手を貸してやってもいいんじゃないか。そう黒兎は思った。もうあんな悲しい思いをして欲しくは無かった。
だから高校の間だけ、黒兎の家の居候は1年だけ、少しくらい面倒見てやろうと思った。
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