相棒
「ハァッ……殺してやるッ……!!!!」
「よせっ、アル!!」
「駄目です、アルさん!!」
仲間の忠告を無視して、魔王に飛びかかろうとした…………刹那。
「んっ……!?」
僕が握っていた魔剣が……不気味な紫色に光り輝き出したんだ。それは初めて魔剣を拾った、あの時と全く同じようで──────
「……あのなぁ、アル。感情的になるなって、俺は何回言えばいいんだよ?」
「えっ…………?」
……魔剣から、少し篭ったような感じの……懐かしい感じのする、相棒の声が聞こえてきたんだ。幻聴ではない。しっかり僕の手元だって確かに震えたんだ。
つまり…………この剣の中にアイツが……!?
それを確信に変えたかった僕は、急いで魔剣に話しかけたんだ。
「シ、シン……?お前……生きてるのか!?」
「一応な……身体は完全に死んでるみてぇだけどよ」
「どっ、どうして!」
疑問と安心と不安の混じりまくった、よく分からない感情になりながらも、僕はシンに向かって尋ねた。そしたら。
「あー。死ぬ直前に自分の魂飛ばして……何とかお前の魔剣に入り込めたんだ。こればっかりは、運が良かったとしか言えねぇよ」
「じゃ……じゃあ!!」
「ああ。少なくとも、俺の魂は生きている」
「……」
シンの言った……生きている。その言葉で、僕の心はこれ以上無いほど安心したんだ。
「本当に……本当に良かったよ……シンが生きててくれて……!」
「大袈裟なヤツめ。俺は簡単にゃ死なねーよ……ッ! 構えろ、アルッ! 【パーフェクトシールド】!!」
僕が魔剣を振り上げると同時に、シンが防御魔法を唱える。反射的に上空を見上げると、魔王の鎌を弾き返している瞬間が丁度見えた。
「チッ、小賢しいヤツめ……!」
「フン、お前のせいで何年魔剣生活やってきたと思ってんだ。俺のテクニック舐めんなよ?」
ここで僕は……シンの言葉を訂正した。
「……俺たちだよ」
「ああ?」
「『俺たち』のテクニックだろ? シン!」
「フン、生意気言いやがって……!」
その言葉とは裏腹に、過去1番の嬉しそうなシンの声がしたんだ。そして僕らは魔王と距離を取りつつ、言葉を交わす。
「アル、アイツ相手に長期戦は厳しい。だから……こっから一気にぶちかますぞ!」
「うん! 了解だよシン!」
僕は走りながら、後方の2人に呼びかける。
「ミミルさん! ピエールさん! 僕に合わせて……ほんの一瞬だけでいいから、ヤツの隙を作ってくれ!!」
すると2人は顔を見合わせて……お互いに武器を構えて、技を出す体制を取った。
「分かりました!」
「やれやれ、仕方ないのう」
「フン……! 我に攻撃が当たる訳が無い!」
そう魔王は言いつつ、僕らの周りを飛び回る。そして僕の正面に……!
「当たれっ!! 【
それと同時にピエールさんは、軌道もスピードも異なる3つのブーメランを、魔王に向かってブン投げた。
「フン、甘い!」
「しまった!」
しかし、魔王はそのブーメランを華麗に避けた……かに見えた。
「……なーんてね?」
「うん!?」
最後の3枚目のブーメランを避けた瞬間、地面から鎖が生えてきて、魔王の身体に巻き付いていった。
「……ふふーん、掛かりおったな?」
「何!?」
実はその間にミミルさんは設置型の魔法を唱えていたらしく、魔王がその場に立った時に発動する、拘束系の魔法が発動したようだ。
魔王なら直ぐに抜け出せるだろうけど……続けて飛んでくる魔法を避けるのは、至難の業だ。
「クソっ……!」
「フフン、喰らうが良い! 【ゲオ・サンダー】!!」
「ウグッ!!?」
ミミルさんの放った雷は、魔王の図体に直撃した。見たところかなり痺れていて、次の攻撃は回避出来そうになかった。
「よしっ、今じゃ! アル!!」
「今です! アルさん!」
……仲間が必死の思いで作ってくれた、チャンス。逃す訳にはいかないっ!!
「行くぞッ!! シン!!」
「任せろ!!! アルッ!!!」
僕らは魔王目掛けて飛び上がり……特別スキルを発動しつつ、魔剣を振り下ろした。
「「はぁあぁぁあっっっ!!!!! 【新・
「グゥッッウッ!!!?」
僕らが振りかざした魔剣は……魔王の心臓部分に思いっ切り刺さった。
だけど……まだ足りない!! もっと……もっとだ!!! ヤツの持っている生命力を全て……この手で奪い取れッ!!!!
僕らが……完全に息の根を止めてやるッ!!!!
「いけぇっっ…………滅べッ!!!!!!!!」
「ウグァァアッッツッッ!!!!!」
すると魔王は大きくもがき苦しんだ後……口から大量の血を吹き出して……ズドンと大きな音を立てて倒れた。
生気は…………全くない。
僕は息を切らしながら……みんなの方を向いた。
「……アル」
「アルさん!」
「アル君……!!」
「…………勝った。勝ったよ」
そして…………魔剣を掲げて。僕は思いっ切り叫んでやったんだ。
「みんな……僕は……僕らは勝ったぞっ!!!!」
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