確信
それで正気に戻った僕は首を動かして、その場の状況を確認した。すると目に入ってきたのは、3人が魔王と必死の攻防を繰り広げている光景だった。
どうやら既に戦いが始まっていたらしい。
「みんな……!」
すぐに僕も加勢しようと思ったが……それよりもハンナさんの方が気になってしまった。一体どこに移動したんだ……?
さっきよりも落ち着いて探してみると……いた。魔王の後ろで隠れるようにして、口をパクパクさせていた。僕の視線には気づいてないみたいだが……
もしかして……魔法を唱えているのか?
「『解析』」
僕はそれが何の魔法なのかを考えるより先に、行動に移していた。そして出てきた解析の結果は。
『眠気覚まし』の魔法……?
「……ん? そう言えば」
……ここで僕は。あの時の勇者との掛け合いを思い出していたんだ。
──
「じゃあ……魔王と死闘を繰り広げたのは!」
「嘘。眠ったフリして不意打ちしただけ」
──
そして……勇者は『眠り耐性』を持っていた。だから僕は回し蹴りで気絶させたんだったよな。
「あっ……そういう事か!」
これで……全部繋がった。分かったよ。
魔王は戦いで僕らを殺そうとしているんじゃない。時間を稼いでいる内に何かしらで僕らを眠らせようとしているんだ。その後に……ってワケか。
それにここは風通りも悪いし、暗い。だから気付いた時には……もう遅いって事ね。眠らせるのにこれほど適した場所はないだろうな……考えたな。
でも……勇者は眠り耐性を持っていたから、アイツだけが助かったってワケか……皮肉なもんだ。
そんな事よりも、僕らには眠りの耐性を持つ者は誰1人としていない。それどころか、誰も気付いていない。
だから……ハンナさんが魔王にバレないように、こっそり僕らに、眠気覚ましを唱えてくれているんだ。
やっぱり……ハンナさんは仲間だったんだ!!
「はぁ……良かった」
ハンナさんが味方だと確信した僕は、とても安心したんだ……けれど。依然としてピンチな状況は変わってはいない。
見た所、魔王にはまだ1発も攻撃を与えられてないみたいだし……だから……早くカタをつけなきゃ。
思った僕は……魔王の視覚外から、素早く飛びかかった。
「だァっ!!」
しかし、僕の剣は空を斬る。
「……ふっ!」
あのスピードの切り裂きを避けられたなんて……いや、違う……コイツ、全てを回避に振っているんだ! 時間を稼ぐ為に……!
「アル、正気に戻ったか!」
後ろでシンから呼び掛けられる。
「うん、それと聞いてくれみんな! ヤツの目は絶対に見ちゃ駄目だから!」
僕が言うと魔王は驚いたような声で。
「へぇー。コレ知ってるんだ」
と、褒めるように拍手してきた……クソっ。バカにしやがって。
「よし……みんな、僕に続けぇっ!!」
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