特訓の日々

 ────それから、僕とシンのとっても苦しい山篭り特訓が始まったんだ。その特訓内容を、軽く紹介していこうと思う。


 その1。毎朝、山をかけ登って体力をつける。


 もちろん山頂までの道などは全く整備されてないので、かなり荒れた道を登っていく事になる。それに……


「はぁ……はぁ……!!」

「タイムが遅せぇよ! もう1回だ!」

「えっ……えぇ……!? 」


 時間がかかったら、こんな無茶苦茶な事を言ってくるのだ。しかしシンの言うことは絶対なので……


「はぁ、はぁ。はい……!」


 こう言うしかない。


 ──


 そしてその2。次は筋力トレーニングで体を痛め付ける。トレーニングの内容は、腹筋や腕立て伏せ等の基本的な物だったけれど。


「う、うぅっ……!! あっ、ああ!! も、もぅ無理ぃ……!!!」


 やる回数が尋常じゃなかった。


 数えてしまうと頭がおかしくなりそうだったので数えてないが、多分4桁は軽くいってたんじゃないかな……そして。


「はい、弱音吐いたからもう10セット追加だ!!」

「…………うがァ!!!!」


 やっぱり無茶苦茶な事を言ってくる。


 ──


 午後からは剣術の特訓。人形姿のシンから戦いに必要な動きを学んだ。


 流石伝説の騎士と言われているだけあって、今の僕からすれば参考になるものばかりだった。けれど……


「……で、ここに敵が来たら、ビュッとやってバシーンよ」

「ん?」

「だから! ビュッ! でズドーン!」


 説明はこれ以上無いほど下手だった。


 ──


 そして次は魔法の特訓。基礎的なヤツくらいなら、自分の力だけで発動出来ると思っていたんだ。でも……


「あれ……どうして出ないんだ?」

「もっと腕を上げろ! 大袈裟なくらいやれ!」

「こう……?」

「違う!」


 全く出来なかったんだ。これまでシンに頼り過ぎていたのを痛感したよ。


 だけど動きや力の入れ方を何回も練習して、使える魔法の数を増やしていったんだ。


 シンも物覚えの悪い僕に呆れる事無く、真っ暗になるまで相手してくれたんだ。


 ────


 こんな感じの生活を毎日続けていた。


 最初の方は度々街に帰って、食料を買ったりベッドで寝たりをしていたんだけど……1ヶ月くらいの所でほとんど街に帰らなくなったんだ。


 帰るとしても……力試しのクエストをピエールさんと行く、魔法や剣術の事をミミルさんやジェネさんに聞く……くらいでしか帰る事はなかった。


 どうしてそんな事になったのかと言うと……とにかく時間がもったいないと感じたからだ。


 1分でも1秒でも早く、戦いのスキルを学んで。強く。誰にも負けない力を手に入れたかったんだ。


 そんな狂った生活を毎日毎日。死にものぐるいで努力を重ねた。そして────











 ────2年後────


 剣士 『アル=エルシア』 18歳 AAランク

 所属ギルド なし。




 中々のバケモノが誕生した。

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