間違えてよかった。永遠のビギナーズラック!運を味方につけてゲームを楽しんでいます

すみ 小桜

1-1 ゲームはじめました

 ビギナーズラックという言葉、一度は聞いた事あるかもしれない。けど、体験した事があるかというと……私はあるというか、ずっとです。

 ゲームの中の話だけどね。


 私こと雨水うすい杏稲あいなは、そのまんま『アイナ』という名でVRゲームを始めたんだけど、運がいいのか悪いのか、ビギナーのまんまで50LV達成です!


 お父さんに感謝だね。まああの時は、ブーブー言っちゃったけど――。



 「おー。来た来た」


 宅配便がお父さん宛てに届いた。

 またネットで買ったみたい。お父さんの趣味なんだよね。でもこれ……。


 「はい。杏稲」

 「何これ……」

 「ゲーム機」

 「いや、それはわかるけど……」

 「いやぁ。買い物してポイントが溜まったから応募したらこれ当たっちゃって」


 そう見せて来たのは、ゲーム機ではなく封筒だ。それも渡されたので見てみると、メールの内容をプリントアウトしたものだった。ガチャコードが書いてある。


 「無料でガチャが引けるみたいだからもったないだろう? で、ゲーム買った」

 「はぁ? 何それ? 持ってないのに応募したの?」

 「どれも持ってないゲームだったんだ」


 だったら応募しなければいいのに。きっと、欲しい人沢山いただろうに……。


 「あ、それ昨日からリリースしてるからちょっと早いけど誕生日プレゼント」

 「え!! 私、これじゃなくてゲームならアイドルの音ゲーがいいんだけど!」

 「これも楽しいって」

 「って、私の誕生日来月!」

 「いやほら、昨日から始まっているし、どうせならね! これ買ったポイントで、また応募しておいたから!」

 「少しは懲りてよ!」


 はぁ……。音ゲーがRPGになっちゃった……。うん? VR……。え~!!

 これ、凄い高いんじゃないだろうか?

 うん。お父さんの気が変わらないうちに始めちゃおう。


 私は、部屋に持って行って、取説もそこそこに始める。

 まずは、自撮りして、さっきのコードもスキャンできるんだ。キャラ名と性別を入れてスタートね。よしっと。


 どんな感じかな? ドキドキする。

 ヘルメットをかぶり、ゴーグルを下げた。


 パッシブマスター~異世界転生風~というタイトルがフッと現れて消えて行った。

 そう言えばそんなタイトルだった。


『あなたを新しい世界へと導きましょう。新しい人生を与えます。これから行く異世界は、剣とパッシブの世界です。いいえ、パッシブが優劣を決めると行っても過言ではありません』


 パッシブってあれよね? 常時発動している魔法とかスキルとか。へえ。


 『では運命のカードガチャを引きましょう』

 「え? もうここで引くの?」

 『はい。異世界転生風ですので……』

 「そうですか」


 目の前に三枚のカードが現れた。


 『どれか一枚にタッチしてください』

 「それじゃこれ」


 真ん中をタッチした。くるんと回転する。

 『1,000タテル』


 もしかしてこれお金かな?


 『もう一回できます』


 また三枚現れた。選んでもどうせガチャだ。真ん中を。

 『パッシブB:視野拡大』


 『おめでとうございます。パッシブが出ました。パッシブは同じ物なら+がついてグレードがアップしていきます』


 へえ。そうなんだ。


 『では、スペシャルカードも大判振る舞いしましょう! 10回分ですよ!』


 大判振る舞いって、それお父さんがくれたガチャコード分でしょう? 選ぶのが面倒なので、全部真ん中を選んだ。カードはさっきと違ってゴールドだったけど、中身が凄いかどうかいまいちわからない。


 『1万タテル』

 『パッシブS:ビギナーズラック』

 『カードC:限界突破』

 『パッシブB:視野拡大』

 『パッシブA:エンチャント』

 『パッシブS:エンカウントガチャ』

 『カードC:限界突破』

 『武器A:雷の剣』

 『カードC:限界突破』

 『カードS:称号固定』


 カードというのもあるんだ。


 『ではこれがあなたへの転生の特典となります。そうそう死んでも大丈夫なように加護を与えましょう』


 加護? なんだろう?


 『ではカナデナスに送ります』


 そこがゲームの世界なのね。



 場面が切り替わった。そう思ったら風や香りを感じる。凄い!

 って、目の前に石板がある。

 これってゲームの解説みたいね。

 タッチパネルみたいになっていて面白い。


 ステータスを表示するには、左手のブレスレットに振れるか。


 書いてある通り触れると、石板と同じような解説が出てきた。

 スクロールして見て行くと、痛覚設定などがある。設定しておこう。痛いの嫌だもんね。

 痛覚0で無痛。振動なんていうのもあるんだ。後ろから攻撃された時の為に、最低でも1を推奨か。じゃ、1と。10段階になっているから後で調整しよう。


 後は、色々読んでおくかな。

 パッシブは、自動でセットされ外す事はできません。無限にセットする事が出来ます。同じパッシブは、「+」されていき能力がアップします。

 パッシブの後ろにあるS~Cの文字は、取得の目安で能力には関係ありません。Cが比較的取得しやすくSになると中々お目に掛かれないものとなります。

 パッシブをタッチすると、効果を見る事が出来ます。


 なるほど。強さとかではないって事ね。


 カードは、カード一覧で見る事が出来ます。同じ種類のカードは、999枚まで持つ事が可能です。


 称号は、セットするとその称号の効果を受ける事が出来ます。一番最初は『ビギナー』となっておりレベル10までセットできます。レベル11になりますと、自動で外れます。『ビギナー』は『死亡時のペナルティなし』の効果を得られます。

 通常は、ステータスの『体力』『腕力』『魔力』『脚力』『運』のどれかマイナスされます。レベル11~19までですとマイナス1。レベル20~29までですとマイナス2となっていきます。最低数値は1です。それ以下には下がりません。無理せず楽しみましょう。


 レベル10までは、がんがん進めるわね。

 で、ステータスはどうなってる?


 ネーム:アイナ

 レベル1

 体力 1

 魔力 1

 腕力 1

 脚力 1

 運  1(+1)


 この横に五角形のレザーチャートのグラフがあった。運だけ2なので、綺麗な五角形ではなく、ちょこっとぼこっとしている。

 体力、魔力、腕力、脚力、運は、レベルが上がった時にもらうポイントを任意で振る事が出来るらしい。

 今のところ、最大5までしか出来ないらしく、限界突破のカードによって最大値が5ずつ増える。つまり限界突破のカードを手に入れないと、レベルが上がっても強くなれないって事だよね?

 確か3枚手に入れているから暫くは大丈夫。


 HP10

 MP10

 攻撃力1(+1)

 防御力1

 素早さ1


 HPとMPは、基本レベルが上がると2増えるらしい。ただしパッシブを手に入れる事で大幅に上げる事も可能みたい。

 このゲーム、本当にパッシブしだいなんだね。


 『視野拡大+1』敵などの発見の視野+2。

 『ビギナーズラック』称号がビギナーの時、運が倍になる。

 『エンチャント』武器のエンチャント成功率1%アップ。

 『エンカウントガチャ』敵に遭遇すると1ポイント上がっていき100ポイントでガチャを一回引ける。


 今あるパッシブは四つ。視野拡大がダブったから+になってる。ガチャが引けるパッシブまであるとはね。

 レベル10までは、運が倍か。運ってどんな事に関係あるんだろうか?


 『運』敵のドロップ率上昇。基本値50%+2%


 なるほど。ドロップ率ね。

 後はカード。


 『限界突破』ステータスの限界突破をする事が出来る。

 使用しますか? ⇒ はい/いいえ


 これは、一番使うカードだよね。


 『称号固定』期限がある称号を固定する。(注意:一度使用しますと外せません。外すときは、称号消滅カードが必要です)

 使用しますか? ⇒ はい/いいえ


 なるほど。気を付けないとね。


 ピ!


 「あ!」


 ――称号固定カードを使用しました。


 「きゃ~!!!! 違うの! ちょっとずれただけなの!!」


 『称号:ビギナー』死亡時のペナルティなし。期限:むげん/交換不可


 あぁ~。外せなくなってる……。何やってるの私!!

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