世界は僕中心に回っていない

@YUKALI

第1話 瞳

 俺は成功者だ。年収3億超。彼女は絶えずいる。別荘は10個も持っている。庶民どもの中に羨ましそうな目で見つめてくる者もいれば、俺がなにか裏でしてるんじゃないかと探っている者もいる。情けないな。庶民は庶民らしくしろってんだ。

 しかし俺は困っている。なんでも手に入ってしまうからつまらないんだよ。金はその辺のサラリーマンの100分の1くらいの時間しか働いていなくともそいつの2倍くらいの収入にはなるし、女は狙わずとも俺につきまとってくる。それは正直鬱陶しいが。そんな俺にも気になる女ができた。カフェに行った時俺のコーヒーを運んできてくれたアルバイトの女なんだが、その辺の女よりもずっとずっと綺麗だ。あの大きくて黒い瞳の奥に何を潜めているのだろうか。


 俺は正直に言うとかっこいいんだ。だからじっと見つめてやればオチるはずだ。別の女で試してみたらオチた。ああ、人間とはなんと簡単なんだろうか。この調子だと今日には彼女になってくれるだろう。くく、楽しみだ。

「いらっしゃいませ。」

 いた。なんともエプロンが似合う女だ。庶民的なところが逆に良い。

「コーヒーを一杯頼む。」ここで見つめる!


 ·····?!なんだ、この女の目を見ると吸い込まれそうだ。あの奥に何かがある·····!この先は危険だと俺の身体が叫んでいるのにどんどん吸い込まれていく。

「お、おい·····。お前の目、おかしいぞ·····。」

 女はニコリと笑った。

「行ってらっしゃいませ。」

 その瞬間、俺の意識は暗い暗い闇の中へと沈んでいった。

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