第21話 悪役女帝と剣奴とアイスクリーム ①
「どうしてこうなったのでしょうか?」
アルスの実妹であるエルマは頭を抱えていた。
帝国との戦争で捕虜となった兄。 戦後、家に告げられた身代金は法外な値。
元々、他に後継ぎがいて長男でもないアルスは……言ってしまえば価値の低い立場であるます。
けれども、いつの間にか人が変わってしまった。
活発だった兄は、気が付けば、誰とも馴染まず1人で過ごしていました。
髪を赤く染め、朱色の槍を永延と振るうだけの日々。
そんなある日、エルマは見てしまったのだ! 魔に乗っ取られてしまったアルスを!
「くっ! おさまれ! 我が右腕に封じられた悪き意思よ!」
「……兄さん、何をしているの?」
「……」
「……」
「くっくっくっ……見られてしまったからには仕方ない! 我の正体は邪悪なる神々が……」
「お父さん!?」
「あっ! いや、待ってエルマ! お父さんを呼ぶな!」
父は、「男の子には、他人と違う事に優越感を持つ時期があるんだ。ちょうど、アルスもその時期が来たのさ。すぐに元に戻るよ」と私の髪を優しくなでてくれました。
でも、私は信じられませんでした。
だって「くっくっくっ……」なんて笑う人を私は見たことがありませんでした。
あれは本当に悪魔に違いありません。
兄は悪魔に体を乗っ取られたのです。だから、遠く帝国で闘技場の王者になったはずなのに独立せず、国にも帰ってこないのです。
だから私は――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「この日記を見る限り、本当にアルス殿の妹君に違いありませんね」とリンリン。
「そういえば、初めて会った時のアルスくんと今のアルスくんだと口調も服装も全然違うけど……そういう理由だったのね」とエイル。
「い、いや……アルスの旦那が放心状態なんだが……ほっといていいのかよ?」とユリア。
あの直後、ドドドと人が出す足音とは思えぬ音を立てアルスとエルマの元にやってきた3人は、怒涛の勢いでアルスに張り付く
「いや、この子は実の妹で」と説明をするアルスに「待った!」をかけたのはリンリンだ。
「もしかしたら、間者の変装かもしれません。まずは荷物を確認しましょう。おや、これは日記ですかね!」
そうして読まれた内容は前記の通りである。
「おのれ! 悪の帝国め! 兄を返しなさい!」
そう喚く妹と意識を失いかけててる兄。
どうするべきかと3人は……
「ちょっとエルマちゃん。みんなで遊ばないかしら?」とエイルの言葉に
「はい?」と困惑するエルマだった。
そうして、放心状態のアルスを連れ4人が向かった先は浴場であった。
そう帝国観光で闘技場と並ぶ観光スポットと言えば広大な浴場である。
闘技場のメインイベントも終わり、帰りに少し浴場によって帰ろうって客も減っていて、ポツーンと1人湯舟につかるアルスは、いまだに感情の整理がつかずにいた。
さて、一方その頃。
女風呂では――――
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