第2話 ネズミごときが口を出すな

いちばん反対したのは、市民代表のリープであった。リープはものを言うネズミであった。「これまで一年かかって準備してきたんです、中止になったら、物資が余ってしまい、これまでかけた労苦はムダになります」リープの弁も、強かった。カイエルとリープはツバを飛ばして激論した。

「お祭りの屋台や、芸人たちの招聘しょうへいを取りやめれば、国民の士気にもかかわります」

 とリープが主張すれば、

「姫が登場しない夏至祭など、意味はない。そもそも、夏至祭は国の行事だ。国家の行事にネズミごときが口を出すな」

 カイエルは一蹴する。

「わたしたちものを言うネズミが、あなたたちの国の建設に、どれだけ寄与したか知らないですか? ほんとうにこの国のことを思うなら、夏至祭はするべきです」

 リープは、キッチリと言い切った。

「しかし、姫は今、まさに死にかけているのだ!」

 カイエルは、ヒリヒリするような声を張り上げた。

「おまえに、あの病を治すことが出来るのか!」

 リープは、燃えるような目でカイエルをひた、と見据えた。

「わたしに考えがあります」

 リープは、小さな指を奥に向けた。

「それを、お貸しいただけますか?」

「それ、とは?」

 指の先を見たカイエルは、バカにしたように鼻にしわをよせた。そこでは、台座の上に載った伝説の剣が、鈍い光を放っている。

「伝説の剣か。それをどうするつもりだ」

「病のもとを、断ち切ります」

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