レッドの悩み
カーニバルレッドは、宿敵ワルデザーの腹部が、赤く染まっているのを見た。さっきのスーパーカーニバルブレイクが効いたのだと確信した。
ワルデザーは、悪の組織、暗黒商会を率いて、世界征服を企んでいる怪人だ。その企てを阻止するために組織されたのがカーニバルレンジャーだ。熱きパッションに導かれた五人の戦士は、これまで暗黒商会と死闘を繰り返してきた。
あと一撃で、奴にとどめをさすことができる。そうは言っても、レッドも満身創痍だ。仲間たちも、負傷している。
「ワルデザーを倒すのは、今しかない。世界に平和をもたらすんだ。ウォー」
レッドのスーツが赤く光った。最終必殺技のカーニバルファイナルだ。
「くらえー」
その時、博士からの無線が入った。
「早まるな。奴はまだ何か手を隠しているかもしれない」
「ワルデザーは弱っています。今、倒さないと回復してしまいます」
「とにかく命令だ。倒さずに戻ってこい」
秘密基地に戻るとすぐに、レッドは博士の研究室に向かった。
「もう少しで倒せたのに、なぜ止めたんですか」
博士は、ため息をついた。
「落ち着きなさい」
「どうして落ち着けるのですか」
「ふう、君は若くて強いが、社会について何も知らないのだ。そもそも私たちの組織の存在意義とは何か。暗黒商会を倒すことだ。そのために各国政府から多額の活動費を頂いている。君たちのスーツの開発費もそこから出ている」
「確かにそうですが」
「仮に暗黒商会を壊滅させた場合、カーニバルレンジャーは、その存在意義を失い、私たちは一般市民に戻らなくてはいけなくなる」
「それは、いいことではないのですか」
「潤沢な研究資金、世界平和追求のために与えられた様々な特権も無くなってしまうではないか。生活の水準を一度上げてしまうと、もう簡単には戻れないのだよ。分かるよね。暗黒商会を完全に倒さず、コントロールできるレベルで悪さをしてもらった方が助かるのだよ。実際問題、あの組織があるから、他の犯罪の抑制になっているというデータもあるのだ。まあ、彼らは必要悪ということだ」
川の対岸には、工場の明かりが見える。
「悪とは何だ」
レッドは、川岸に座り、対岸の工場の明かりを見ていた。
「難しく考えるなんて、お前らしくないな。レッド」
レッドが、振り向くとブラックがいた。ブラックは、レッドの横に座ると、缶コーヒーを差し出した。
「役割というものがあるんだ。俺たちは、暗黒商会を倒すという役割。たとえ迷いが生まれたとしても、俺たちは、暗黒商会を、ワルデザーを倒さなくてはいけない」
ブラックは、立ち上がる。
「
役割か。確かにブラックは、駄洒落を言わないで欲しい。
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