最高のお祭り
風見☆渚
“最高のお祭り”って何?
「ねぇ、先輩。“最高のお祭り”って知ってます?」
「祭り?まだ秋になったばっかだぞ。夏休みも終わってるのに今更祭りなんてどっかでやってるのか?てか、そもそも今は仕事中だぞ。デスクが正面だからって覗き込んで余計な話してないで仕事しろ仕事。」
「先輩、今の時期に祭りがあっても可笑しくないですけど。そうじゃなくて、“最高のお祭り”っていう名前のチェーンメールですよ。聞いたことありません?」
「珍しく真面目な顔してパソコンの画面と睨めっこしてると思ったら、またスマホイジってたのか。チェーンメールだか不幸の手紙だか知らんが、そんな名前のメール聞いたことないぞ。どっかのインチキ詐欺メールかなんかじゃないのか?」
「私が学生の頃から結構流行ってたんですよ。最初は流行りのワンクリック詐欺とかそんな感じかなって私も怪しんでたんですが、最近LINEに同じ内容のモノが出回ってるらしいんですよ。」
「いくら出版社だからって、そんな都市伝説を扱うほどネタには困ってないはずだぞ。」
「それはそうなんですけどね・・・実は、私の知り合いの知り合いがその“最高のお祭り”が来たって騒いでるらしいんですよ。」
「おいおい・・・そもそも、知り合いの知り合いなんて赤の他人じゃないか。そんな又聞きの噂を記者が信じるのか?」
「でも、その人メールを受け取った1週間後、行方不明になったらしいですよ。」
「だから、らしいとかそんな憶測でしかない話を信じろって方がどうかしてるぞ。」
「そうなんですけど・・・・・・」
「なんか、妙に歯切れ悪いな。なんでそんなに気になってんだ?」
「はい。実は・・・・・・私のとこにも来ちゃいました。てへっ」
「は?その祭メールってのがか?」
「そうなんです。ちなみに先輩、“最高のお祭り”ですからね。祭メールなんて楽しそうな内容じゃないですからね。」
「内容は確認したのか?」
「まだです・・・だって怖いじゃないですか!」
「あ~はいはい。
で?その“最高のお祭り”?ってのは、どんな話なんだ?」
「はい。昔からよくある不幸の手紙と同じように、届いた人は1週間以内に3人の人にこのメールを送らないと不幸になるということは大前提であります。LINEって、添付のアドレスがあると簡単な説明の文章が一緒に書かれているじゃないですか。そこにもそういった内容が書かれているので、一応間違いないと思います。」
「まぁ、ありがちなヤツだな。それで、肝心の内容はどんな感じなんだ?」
「それが、まだ怖くてアドレスにアクセスしてないんです。聞いた噂によると、アクセスすると動画が流れるらしいんですけど・・・」
「昔、そんな映画あったなぁ。確か、その動画は停止出来ない。加えてスマホの操作も出来ない。挙げ句、そのスマホから自分の名前で着信があるとか。まぁ、そんな事あり得ないけどな。」
「・・・・・・先輩。なんで知ってるんですか?」
「え?・・・だってそんな話だったら都市伝説的にも良くあるパターンだろ?マジなの?」
「はい。マジです。」
「だが所詮噂だろ?聞いただけってだけだろ?」
「はい。確かにそうなんですが・・・」
「なんだ。言ってみろ。」
「さっき話した知り合いの知り合いの人の事ですが、自分からの着信に出たら自分の声で助けてって・・・しかも、1週間後にその人行方不明になったそうです。」
「それもありがちだな。だってそうだろ?
昔からよくある都市伝説とかホラー映画でも、似たような事が起こるじゃないか。そんな噂話信じる奴がどうかしてるぞ。」
「そうですよね?私もそんな話信じられなくて・・・でも、実際自分にこのメールが送られて来たとき、どうしたらいいんだろうって思って・・・」
「だったら送ってきた友達かなんか知らんが、そいつに聞いてみればいいじゃないか。」
「それが・・・そのメールの送り主・・・私からなんです。しかも、中身をみるのが怖くてアクセスする前に、『誰?』って送ったらすぐ既読になって、その後すぐに『たすけて』って送られて来たんです。」
「はぁ~・・・ちょっと見せてみろ。
・・・・・・・・・本当だ。確かにお前のアイコンでしかも既読になってる。
ん?これ可笑しくないか?日付が来週の金曜日。丁度今日から1週間後になっるぞ?返信の日付とか既読の時間まで来週の日付だ・・・これ、単なるバグじゃないのか?一回アンインストールしてからもう一回インストールし直していみろよ。」
「そしたら、友達とかのメッセージも一緒に消えちゃうじゃないですか。」
「だったらスクショでもなんでも方法は色々あるだろ?
別にアカウント全部やめろとまでは言ってないんだから。」
「う~ん・・・・・・」
「そんなもん消して忘れちまえばいいだよ。」
「そんなもんですかね?」
「そんなもんだ。それ、俺が一緒にいてやるから今やっちまえよ。」
「はい。わかりました。じゃぁ一回消しますね。・・・で、もう一回インストールっと・・・」
「どうだ?消えたろ?」
「・・・・・・先輩・・・・・・・・・」
「どうした?」
「・・・せんぱい・・・」
「なんだ涙ぐんで。大事な思い出のメッセージも消しちゃったのか?お前、中学生か?」
「せんぱい!」
「だからなんだよ!」
「これ・・・・・・」
「『たすけて』『けさないで』・・・・・・
お前、さっきちゃんとアンインストールしたんだよな?」
「はい・・・」
「普通ならメッセージ履歴も消えるよな?」
「・・・・・・はい・・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」
「とりあえず、画像にアクセスしてみるか。」
「え?でも・・・なんか起こりそうで怖いんですけど・・・」
「でも、これじゃぁどうしようもないだろ。」
「はい・・・じゃぁ一緒に見てくれますか?」
「あ、あぁ、わかってる。」
「じゃぁいきますよ!」
「よしこい!」
――――ピッ、ザザーー・・・・・・♪♪♪
「ん?駅の、アナウンス?」
「この曲って、駅とかで流れてるアレですよね?」
「あ、あぁ、そうだな・・・」
「あ、何か出てきました。」
「ん?この黒いコートの奴はなんだ?ゆっくり顔をあげてくるぞ。
これは・・・ピエロか?
いや、ピエロの着ぐるみだ。ピエロの着ぐるみにフード付きの真っ黒なコートを被ってる。」
“みんな~♪最高のお祭りって、知ってる~?♪
最高のお祭りって、なんだと思う?♪
それはね~・・・ち♪ま♪つ♪り♪
血祭りだよ~♪
きゃはははははは!!!!
じゃぁ今からキミのところにも、最高のお祭りを届けてあげるね~♪
このお祭りは、みんながいないと絶対に出来ないお祭りだから、不参加や拒否は出来ないからね~♪そんな悲しいこと言わないでね~♪
楽しみに待っててね~♪
今から、必ず、迎えに行くからね!!!!!!!!!!”
「きゃっ!」
「うぉわっ!脅かすなよ。」
「だって・・・」
「突然落とすからスマホの画面割れちゃったじゃない・・・・・・か?
これって、お前か?」
「え?・・・わたし、ですかね?隣に先輩もいますよ?」
「何?なんで俺たち、こいつの後ろで踊ってるんだ?」
「踊ってるんじゃないです先輩!これ、両手を縛られながら吊されて暴れてるんです!」
「しかも、全身血だらけだ・・・・・・
ここ何処だ?この場所、なんか見覚えがあるような・・・」
「先輩・・・この画像に映ってる場所って、もしかして、このオフィスじゃないですか?」
「そんなわけ・・・マジか・・・」
「・・・・・・先輩。先輩の電話、鳴ってますよ。」
「誰だこんな時に。」
「先輩、出ないんですか?」
「あ、あぁ出るよ。もちろん出るさ。」
「手、震えてますよ。」
「そんなことないし。俺がこんな子供だましの画像にビビるわけ・・・
うわっ!」
「先輩?」
「・・・・・・お、俺からの・・・着信だ・・・」
「スマホ、止まりましたね・・・
また鳴り出しましたよ。先輩。」
「今度はLINEの着信だ。なんだこんな時に。誰だよ・・・・・・」
「先輩?」
「・・・俺からの・・・・・・俺、こんなスタンプ持ってねぇ・・・」
「どういうことですか?
ピエロの絵に、『HELP』って・・・」
「なんでこんなに連打で送られてくるんだ!!」
「先輩!このスタンプ、少しずつ変化してます!しかも、段々血が・・・」
「うわーーーーーーーーー!!!」
「先輩!何処行くんですか?!」
「だってお前、これは可笑しいだろ。どう考えたってありえねぇ!」
「私だって信じられませんよ!」
「おい・・・お前のスマホも鳴ってるぞ・・・」
「え?」
「何だ!何が送られてきた!」
「先輩・・・・・・私にも先輩と同じスタンプが、やっぱり連続で送られてきてます・・・・・・」
「うわーーーーーー!!!」
「先輩!」
「何でだよ!なんでドアが開かねぇんだよ!鍵なんてねぇのに!!
誰か!誰かいないのか!!ちきしょ!開かねぇ」
「そういえば先輩・・・・・・今日って、平日ですよね?」
「それがどうしたってんだよ!お前も手伝え!ドアが開かない!」
「そうじゃなくて・・・なんで、オフィスに私達しかいないんですか?」
「そんなわけ・・・んっ?
皆何処行った?!」
「先輩・・・・・・」
「今度は何だよ!」
「窓・・・」
「ここは8階だぞ。窓がどうし・・・っ!」
“みんな~♪迎えに来たよ~♪
楽しい楽しい最高のお祭りを、一緒に楽しもうよ~♪”
最高のお祭り 風見☆渚 @kazami_nagisa
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