ある日死んだと思ったら美女になっていた

木庭袋 湊

プロローグ

いつも家と職場の往復。休日は寝てるかゲームをしているかでろくに外出もしない毎日。

外出するのは食料の補充か腐れ縁のやつらと遊ぶくらいで特に何かしたいわけでもない。

することもやりたいこともないから気の向くまま過ごすだけ。

それが僕だと僕自身は思っている。けれど周りからは早く結婚しろだ、おまえは心配だから早く安心させろとかetc…

僕は望んでこうしているのだから周りになにを言われようと変えるつもりはないのだ。

そりゃ、僕だって変われるのなら変わりたいと思っている。

けれど、僕がなにか新しいことを始めたりなにかを頑張ろうとしても周りは馬鹿にするのだからやっても無駄だと思ってしまうほどに周りの僕に対する対応が僕を苦しめて辛い。それこそ死んでしまいたいと思ってしまうほどに僕は追い詰められていた。


それならいっそ勇気を出して変わればいいと思うかもしれない。

けれどーー僕は変わりたくない。変われない。

変わったって周りはまた馬鹿にするだけで変わらない。

それは決め付けで、周りのせいにしているのはわかっている。

逃げているのだと、自分を変えるのは自分だとわかっている。


だから、僕のことをよく理解わかっていて、親身になってくれるような理想的な女性ひとでも現れて言ってくれたら変わってやる。

なんて、そんな甘ったれたことを望んでいる。


はあ、そんな女性ひと現れないかなあ。


そんなことを考えながらも目的を果たし、その帰り道に僕、榎本祐馬えのもとゆうまは交通事故に遭い死んだーー。

けれど後悔とかはなかった。なにより今の生活に環境に嫌気がさしていたし、これで死ねるのならそれでいいと思ったから。もう疲れていたから。


事故の原因は僕の信号無視だった。歩行者信号が赤なのにもかかわらず、僕は横断歩道を渡り青信号になりアクセルを踏み込んだ車に轢かれた。

悪いのは僕だ。

最後に視界に映っていたのは僕を轢いてしまって頭を抱えている男性の、その後ろにいた生まれ変われたらあんな女性ひとになりたいと思えるような僕の理想といえる綺麗な女の人だった。




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