雨粒

Norider77

『ラベルを付けたがる女』

自分で言うのも何だが、僕は滅多に人を嫌いになることはない。


なぜなら、どんなに嫌な人でも深く関わることによってその人にしかない輝きを知ることができると信じているからだ。しかしながら僕も人間である。どうしても相容れない人もいる。いわば水と油のようなものだ。


僕自身はそんな日相溶性な人種にも興味がある。頑張って近づこうとしたこともあった。しかし、それは実際無理だった。彼らに危険を感じた僕の第6感は鳥肌を立ててメッセージを送ってきたのだ。「このままじゃ、お前も飲まれる」と。本能が反応していた。邪気を放った彼らは、臍の緒のような生命力と繋がりで周りを自分の世界に迷い込ませる。


彼女もそのような人だった。


美しい女性は「ラベルをつけたがる女」だった。特に異性に対してはその傾向が顕著だった。彼女は頭の中に棚があるかのように、男性によって態度を変えた。ある時は嬉しそうに笑い、ある時は蔑んだ目で見下した。彼女が貼るラベルは「経歴」だった。どこの大学を出たか、今どんな仕事をしているか。「あの人は〜大学を出ているのよ」。そんなことを語る彼女はいつも自慢げだった、いかにも自分がその大学を出たかのように。


それにもかかわらず彼女は男女関係に関して、自分自身にラベルを貼るのを頑なに拒んでいた。いろんな男性がアプローチをしても首を縦に振ることはなく、多くの男性は打ちひしがれて彼女の前を去っていった。中には一夜の関係を共にしたのちに深い関係を望んだ者もいただろう。


僕はそんな彼女を一時期は好きになっていた。一緒に映画を見たり、カフェで食事をした。酔っぱらった彼女を介護したこともある。僕は彼女の世界に迷い込んでいた。

直接な物言い、屈託のない笑顔。僕は何も見えていなかった。それが深い森林だとも知らずに。しかし、その一途な思いな一方で、彼女が僕に対して「恋愛対象外」というラベルを貼っていたのも知っていた。「興味がない友達」と言いふらし、周りに回って言葉は尾鰭をつけて僕を傷つけた。


そして、しばらくして僕は告白した。


それは、半分は付き合うためであり、半分は関係を立つためだった。

中途半端な関係をやめたかったし、それに少しでも「愛されることの大切さ」を知って欲しかった。利己的と言われればそうなのかもしれない。しかし、その当時に僕にできるのは告白だけだった。


答えは「ごめんなさい」だった。

理由は聞くことができなかった。なぜなら、彼女の口調が気になったからである。


理由があったほうがいいよね,,,


それ以上、僕は聞くことができなかった。


僕は彼女に「ラベルをつけたがる女」というラベルとつけた。

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