第18話 親バレしました

 朝の陽ざしをカーテン越しに浴びて、覚醒する。そういえば、昨日は……。

と思い出して、隣を見ると、俺に抱き着いて寝ているゆかりの姿。


(ゆかりとしちゃったんだな)


 もちろん、後悔はしてないが、こうして同じベッドで一緒に寝ているのを見ると気恥ずかしくなる。とりあえず、さっさと服を着ようとする。


「うーん。みっくん……」


 ゆかりが抱き着いて離れない。まだ眠っているのだろうか。とはいえ、そろそろ起きないと。そんなことを思っていると。


 トントン。扉をノックする音が聞こえる。


「ゆかり。もう朝よー」


 ほのかおばさんの声がする。

 ヤバイ。俺たちは同じベッドに寝ていて、しかも、まだ裸のまま。

 なんとか、俺だけでも身を隠さないと。


「おい。ゆかり。朝だよ。起きろ」


 小声で呼びかけながら、身体をゆさぶる。しかし、ゆかりが起きる気配はない。

 とりあえず、強引にでも引きはがすか―そう思っていたところ。


「ちょっと、大丈夫?入るわよ」


 おばさんが部屋に入ってきた。


 おばさんと目が合う。おばさんは、裸の俺と、同じく裸で寄り添っているゆかりを見て、フリーズしている。やってしまった……。


「ママ?どうしたの?」


 ようやく、ゆかりが目を覚ましたようで、目をこすりながら、身体を起こす。


「え」


 同じく、フリーズするゆかり。一体どうすればいいんだ。


「話は朝ご飯の時に聞くわね。準備は出来てるから、服を着て降りてらっしゃい」


 おばさんは、それだけ言って、ドアの向こう側に消えて行ったのだった。


「えーと、その。どういうこと?」


 まだ状況を把握していないらしいゆかりは、目をきょろきょろとさせている。


「まあ、なんだその。俺たちの関係がバレたってことだ」

「ど、どうしよう」


 途端に狼狽え出すゆかり。とりあえず、服を着ないままだと目に毒だ。


「とりあえず、落ち着け」


 肩に手を置いてそう告げる。


「う、うん」


 依然として、動揺しているゆかり。


「とりあえず、話を聞いてみないと始まらないから。着替えて下に降りようぜ」

「そうだね……」


 ゆかりはどうやら相当落ち込んでいる様子。いや、俺もタイミングが悪いと思うけどな。




 そんなこんなで、1階のダイニング。座るのは、俺とゆかりとおばさんの三人だ。おじさんは既に仕事で家を出た後らしい。


「二人は付き合っているということでいいのね?」


 単刀直入に切り出すおばさん。声からは怒っているのかどうかわからない。


「は、はい」

「うん」


 縮こまる俺たち。


「それで、さっきの事だけど。ちゃんと避妊はしたのね?」


 そっちのことを尋ねられるとは思わず、俺とゆかりは目を見合わせる。


「それはもちろんです」

「だよ」


 揃って返答する。


「……じゃあ、別に問題ないわよ。裸のゆかりたちを見たときはびっくりしたけど」


 そう胸をなでおろすおばさん。


「怒らないんですか?」


 おそるおそる聞いてみる。


「ゆかりがあなたの事を好きなことくらいは、見ていてわかってたもの。むしろ、いつくっつくのかしらと思っていたくらいよ」


 そう微笑むおばさん。


「ただね。時と場所を選びなさいね。昨夜、ゆかりの部屋から変な音がすると思って気になってたんだけど……」


 おばさんがぼやく。考えてみれば、同じ2階だから、ベッドが軋む音とか聞こえていても不思議じゃないのか。


「あ、はい。ごめんなさい」

「ごめんなさい、ママ」


 揃って謝る。


「ならよろしい。それと、おめでとう、ゆかり。想いが通じて良かったわね」


 娘に祝福の言葉を贈るおばさん。


「うん。ありがとう、ママ」


 そんなこんなで、おばさんに関係がバレたものの、あっさり許可されたのだった。



「しかし。おばさん、凄く寛容だよな」


 付き合うだけならまだしも、致してたのを見ても何も言わないとは。


「ママはパパと大恋愛して結婚したって言ってたから。そのせいかも」

「なるほど」


 おばさんがゆかりの弟か妹を作ろうとしているという話があったのを思い出した。 だからこそ、なのか?


「……これからは、時と場所を考えようか」

「そうだね」


 俺の提案に、ゆかりは神妙にうなずいたのだった。

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