Vtuberの中の人!@ゲーム実況編

茶鹿 秀太

第1話 Vtuberの中の人

「はいどうもー」

























「ハロー」 「こんにちは!」






















「はーいはいはい」「おはクズ・・・!」 「おはよぉおおおおおおおおおお!!!」 「気をつけ!」「下等生物の皆さんご機嫌よう!」 「おっすおっす!」「よぉ!」「おつおつおー!」「ハロー旦那様」 「やっほーい」「元気~?」「きらっきー!」「こんるる~」「はぁい!」 「「はおー!」」「どもどもおめがってるー?」「みなさーん!」「こんにち ハッカ!」「やっほー!」「どうも、おはようさんです」「おはララー」 「みなさんこんにちは!」「おはぴよ!」「やぁ諸君!」「やっほー」「ハウ ディー!」「HANJO!HANJO!」「おはようございます」「るーるるる」 「カッカッ」「おばんです」「ぶぉおおおおおおおおおおおお」 「こんにちにんにん!」「ご機嫌よう!」 「やっほー!「こんちわわ~」「にゃっほにゃっほー!」」「ちゃおん!」














朝7時。日曜日のニュースが流れている。



テレビをつけっぱなしにしていれば、きっと目にすることのある番組で、こんな特集が組まれていた。


「ここで、現在インターネットを中心に若者に人気のコンテンツ、Vtuberについて再度説明したいと思います」


ニュースキャスターもよく分からなそうな表情で、原稿を読み上げる。


テレビを見ている人は、今どんな気持ちなんだろうと想像しながら。


こんなもの、本当に流行ってるの? と。


実際その想像は正しかった。


一度はこのコンテンツが、もう終わったと思われていたのだから。


流行ってないと言っても過言ではなかった。



「Vtuberとは、外見が CG やイラストのキャラクターである動画配信者のことです。

主にYouTubeで活動しています。


科学的技術を用い、表情や人間の動きをデジタルデータ化し、CG やイラスト を動かすことで、アバターが演じているように見せることが出来るわけなんですけれども。


とりわけ vtuber を操作する「中の人」のことを、「魂」と呼んでいます」




あぁ、つまりアニメキャラになりきってYouTuberしてるわけね。

そんな風にゲストは表現した。




「こちらの方々の活動は、YouTuberと同様に、「音楽」「ゲーム実況」「生放送」「企画」といった動画投稿を行うことが主流だそうです」


ニュースキャスターは苦笑いを浮かべている。全く理解できなかったからだ。


ゲストも同様だろう。いつ現場の空気が凍りだすか不安そうな新人ADは収録中にも関わらずお茶をがぶ飲みしている。


すると、空気を変えるようにガハハと大声で笑った男がいた。


「だって、結局それってYoutuberじゃん? しかも顔隠してやってるって、いかにもオタクっていうかアキバ系で良い印象ないよぉ? 芸能界じゃやっていけないねそんなメンタルじゃ!」


重鎮のアナウンサーが理解のないままコンテンツをディスった。


ややウケたのが満足そうだった。


「そんな中で、それらすべてのジャンルに精通した Vtuber ユニットが登場しました。 それが、アイギス・レオです」


そう言った瞬間、VTRが流れ出す。

どうせ、大したことはないのだろうとタカを括っていた人たちが、VTRを見て凍りついた。


ただ血の気を引かせるような凍りつき方じゃない。


「本物」がそこにあって、呆気に取られただけだ。







VTRに出てきた会場は、おそらくこの場にいる人間は誰も知らない。


なにせ、そこは電脳の海にそびえ立つライブ会場。


インターネットの生放送で、インターネット上の会場で、3Dのアニメ少女5人組が、歌と踊りのパフォーマンスを行なっているなんて、誰も理解できなかった。


科学技術の最先端。


2次元の別視点からの刺客。


或いは、顔を隠した自己表現の延長線。


間違いなく、YouTuberと同じで、思い描くYouTuberとは全く違ったコンテンツがそこにあった。


アイギス・レオ。


そう呼ばれるグループの少女たちは、アニメのキャラだったけれど、その笑顔もパフォーマンスも、本物としか言いようがなかった。

それほどまでに、全力のパフォーマンスがそこにあった。



「みんなー! 盛り上がってるー!?」


流れてくるコメント、ファンの声は音になって届いていない。


でも、生きた声だった。全力で今を楽しむための、文字が大量に流れていた。


生きてる。


目の前でパフォーマンスをしている少女たちが、生きているように感じる。


リアルタイムの動きを反映しているのか。


あるいはすでに収録済みのダンスを垂れ流しているのか。


そんなことはどうでもよかった。


大事なのは・・・。リアルに負けない本気の熱量が、そこにあったことなのだから。


観客もアバターを身にまとい、パソコンの前でパフォーマンスを最前列で楽しんでいるはずだ。


VTRで見るより、熱と、愛が溢れた時間を間違いなく楽しんでいたはずだ。


それを証拠に、一人のアバターが、恋い焦がれるようにアイギス・レオを見つめていた。


そのアバターの目には、彼女たちの胸元に夜空みたいにきらきらした闇が広がっているように見えた。


綺麗で、美しくて、楽しくて、もう感情が爆発して、「ヤバイ」とか「尊い」なんて声が周りで発せられる中、そのアバターだけは、反応が違った。


「いいなぁ。すごいなぁ」


目を一段と輝かせて、漏れた吐息と一緒に、誰に向けるでもなく、電脳の海に埋もれるくらい小さな声で、本気の熱意で。


「私も……ッ!」





vtuberの中の人。

第一話「音楽編」

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