帝国の第三皇子エウリアスと、魔術師イズメイルが織り成す物語。
この作品はもう、本当に非の打ち所がありません!
重厚かつ繊細な筆致、よく練られた世界観、魅力的なキャラクターたち……全てが高いレベルでまとまっています!
ストーリーの大筋は、エウリアスくんとイズメイルくんの友情を描いているものです。最初は喧嘩ばかりだった二人が心を通わせ、無二の親友となっていく様は必見です!
しかし立場の差をはじめ、二人の間には様々な障害が立ち塞がり……プロローグの不穏さも相まって、展開に手に汗握ります。
キャラクター造形も素晴らしく、特にイズメイルくんは本当に魅力的です。傲慢なくせに臆病なところがあったり、とても人間らしくて好感が持てます!
世界観も緻密に練られていて、特に「鏡術」や王と魔術師の伝説など、細かいところまで作り込まれています。史実などを参考にしているのでしょうか、本当に脱帽です。
本当にもっと読まれるべき、評価されるべきだと思います。
二人の物語、どうか刮目して御覧あれ、です!
主人公の一人でもある帝国の第三皇子エウリアスは、その母が踊り子から王の側室になったという出自から王宮で孤立し、対等の友人がいなかった。武芸や文学に身が入らず虚勢により自分を保ってきたエウリアスは、十三歳のある日、自分と同じ日に生まれた魔術師と出会う。その魔術師イズメイルは皇帝や重臣たちの前で巨大な炎を見せ、そして蝶に鳥に変化させ、その優秀な能力を示した。エウリアスはたちまちに魅了され、彼に会いに行き、喧嘩をし、共に未来の将軍と宮廷魔術師を目指していく‥‥。
この『エメラルドの魔術師』の冒頭十三話までの、一番印象的なシーンは身分の違う二人の少年が時に喧嘩をし、時に互いの成長を刺激しながら友情をはぐくんでいく描写である。詳しい内容は本文を読んでいただくとして、ちょっとした言い合いや、その時の仕草などの描写は理想の友人関係であり、王道の少年たちの成長物語を楽しめると思う。
しかし、序章での村での虐殺や、恐らくそれに関係していくだろうと思われるイズメイルの過去が露わになるにつれて、今後、成長した二人が相討つのか、それとも他の道を選んでいくのか、気になる伏線が多くなってくる。少年期が終わり、青年期に移るにつれて、政治・神話・皇帝とその一族などが複雑に絡み合い、その渦中に主人公たちが放り込まれるのであろう。
物語の最後に主人公たちが手を取って横に立っているのか、それとも剣を握り背中合わせに立っているのか、今後の展開が楽しみである。