冷酷鷹と弱虫兎
砂糖菓子屋
第1話
『第一位は、おめでとうございます、獅子座の貴方』
卵を焼く火を一旦停めてテレビの前に座る。名門校を選んで良かったってつくづく思う。 だって学生寮の各部屋にこんなご立派なテレビが設置されちゃうんだもの。体験入学に来た時はもう此処しか無いって思った。 運命ってヤツだね。僕、宇佐見優兎(ウサミ ユウト)の実家がある田舎町から電車で二時間。 たった二時間でびっくりするほど都会に着いちゃうから世界は広かったり狭かったり丸かったり青かったり。
そんな神秘さえ覚える都会に、僕らの学舎『落命学園(ラクメイ ガクエン)』は聳え立つ。 その凛とした姿は男子校というむさ苦しさも忘れてしまいます。 ヨ、日本一!勿論名門校様々、平々凡々は門前払い。この春無事に入学するまでの数ヶ月、不安でニンジンが喉を通らぬ日々でした。 お祖父ちゃんが名高い人で本当に、本当に良かった。
『本日は恋愛運が絶好調です!』
親友の猫山万里(ネコヤマ バンリ)と共に田舎を抜け出し、学生寮から落命学園へ通う日々。万里は実家が柔道教室で、その見た目からは考えられぬ程強く勇ましい。 見た目は僕が知る人の中で一番可愛いのに。 ちなみに男女含む。黒帯の実力が認められ落命学園にはスポーツ特待生として入学。 僕は何とかギリギリ一般入学生です。 でもまぁ「成績良いならこの家柄でも認めてやるよ」的な扱いなんですがね、ハハ。お金持ちの坊っちゃんが集まる学園、特待生はあまり良い扱いを受けないと評判でした。 が、長年特待生が頑張り続けたお陰か最近は随分丸くなったそうで。……というか、特待生に凄まじい人がいるんだよね。 噂ではサイボーグ。 関わりないだろうから詳しくは聞いてないけど、それでも耳に入ってくるくらい有名人。痛い系の話しか聞かないからね、お耳にチャック。 痛いのはダメ、絶対。
『運命の人に出会うかもしれません』
あぁイケない、卵焼き卵焼き。 お弁当作って早く行かなきゃ。万里は部活の朝練で先に行ってるし、一人ぼっち登校だとどうも時間にルーズになってしまう。 遅刻しちゃうよ遅刻。占いは一位。 良いことあるかも。期待に鼻の穴を膨らませながら、前髪を分けてピンで留める。 この金髪にもようやく慣れてきた。高校生になった。実家からも離れた。何だかちょっぴり大人になった気分だ。
だから、恋をしたい。素敵な恋を。
「さて、行きますか」
弁当を鞄に入れ、ブレザーに袖を通す。
テレビの中、万里が好きな巨乳のアナウンサーが笑う。
『それでは今日も、良い一日を』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます