二人っきりの夏祭り
鳴子
第1話
「なあ、どうするー? このまま行くか?」
俺は隣にいる涼風ななみに聞いた。
「うん。二人とも行けないらしいから二人だけで行こ」
ななみはそう答えた。
俺たちは夏祭りに四人で行く予定だった。しかし、二人が急に来れないと言い出して二人で行く事になったのだ。
「じゃあ行くか」
「うん。行こ!
ああ、可愛いな、ななみは……俺はななみが好きだ。いつも遊んでいるが二人でということはなかったから少し気まずい。あいつらがいないと話せる気がしない。
「どうしたの? 翔くん」
「あ、ああ、なんでもないよ。行くか」
「うん!」
そこから俺たちはいろいろなところを回った。まずは射的だ。
「わぁー翔くんうまーい。こんな所に新たな才能が!」
「なんだよ、それ。まぁ良いや。何か取ってほしいものあるか?」
言ってから思ったがこのセリフ恥ずかしい。言うんじゃなかったよ。
「本当! じゃあこれを取ってほしいなー」
と言ってクマのぬいぐるみを指差した。
「あれかー……」
ちょっとキツそうだなと思ったが、ななみのためだとってやるぞ
「よし、やるぞ」
「おおー、がんばれー」
俺はななみに応援されながら、クマに向かって銃を構える。(ぬいぐるみを射的で落とそうとしているだけです)
バーン
クマに向かって飛んでいく。
ボスッ、ボテ
「……」
「……」
あれーなんか簡単に落ちたんだけど……本当に俺って射的上手かったんだ。
「おめでとう! はいこれ景品な」
「あ、ありがとうございます」
そう言って射的のおじさんにクマのぬいぐるみを渡された。
「あと、これもやるよ。サービスだ。自分の彼女のために、あのぬいぐるみを落とすなんてな。びっくりしたぜ。前に君らみたいなやってたが落ちなかったのにな。まぁ良いや。彼女さんを大切にな」
「え、……」
ちょっと言いたいことが多かったがこの言葉が最初に出てきた。
「か、彼女じゃないですよ!ただの友達です!」
嬉しいはずなのに、否定してしまった。まぁ俺じゃ釣り合わないしな。
そう言ったあと不意にななみの方を見てみる。少し怒っているみたいだった。
「どうしたんだ。ななみ」
気になり聞いてみたが
「なんでもないよ」
と返ってくるだけだった。彼女と勘違いされて怒ってるのかな。俺、嫌われてるな。多分。このやりとりを見ていた射的のおじさんが
「彼女さんをも大変だなぁー」
と言っていた。どう言う意味だろう。
射的屋を後にし、他にもいろいろなところを回りもうそろそろ花火という所になった。しかし二つ問題がある。
一つ目はまだ少しななみの機嫌が悪いことだ。それは頑張って直すけど問題は二つ目だ。ななみがいない。人が多くなったためいつの間にか離れていたみたいだ。
「急いで探しに行かないと」
俺は人を掻い潜りながら、ななみを探した。
少し開けた所に出た。しかしななみはいない。
ヒューーパァンパァン
花火の音が響いた。
「やばい、花火が始まった。早く探さないと」
俺は一段と早く走った。折角二人で夏祭りに来れたのに離れるのは嫌だ。
「ななみ、ななみー!!」
花火の後にかき消されてもおかしくないのに、いつの間にか俺は叫んでいた。
そして少し経った。少し登り坂を登っていた。こんなとこにはいないだろうと思ったが来てしまった。
ヒューーパァンパァン
また花火の音が響いた。
「はぁ、どこ言ったんだよななみ……」
俺は思わず呟いていた。すると少し先の公園で人影が見えた。よく見えないがあれはななみだ。なぜか自信があった。
「ななみ!」
俺は公園に入り、ななみを呼んだ。
すると少しすると
「ああ、見つかっちゃったかー」
と声が聞こえ、聞こえた方を見てみるとそこにはななみが居た。
「翔くん早いよー。もうこんなところに来たのー」
ななみが不服そうに言った。
「な、なんかごめん。ななみが俺のこと嫌いでも俺は心配だったから」
俺が少し悲しそうにいうと
「えっ! 誰が嫌いなんて言ったの! 私、翔くんのこと嫌いじゃないよ」
と凄い勢いで返してきた。
「そうなんだ。良かったよ嫌われてなくて」
俺は安堵した。嫌われてなかった事に。そして気になったことを聞いてみた。
「そこで何してたの?」
すると気まずそうにななみは答えた。
「えっとね、まだ完成じゃないんだけどねミサンガ作ってたの。ずっと前から作ってて翔くんに渡したかったんだよ」
「えっ俺に?」
俺は驚いて思わず聞き返してしまった。
「うん。もう見られたから良いや。私はね、翔くんのことが好きなんだよ。本当はミサンガを渡すときに言いたかったけど」
お、俺のことが好きだってー!?
「…………」
俺は驚きすぎて声が出なかった。するとななみの顔が見る見るうちに悲しくになりこう言った。
「やっぱりダメかな」
「そんなわけないよ! びっくりすぎて声が出なかっただけ。めちゃくちゃ嬉しいよ。俺もななみのこと好きだったんだ」
俺はすかさず否定して本当の気持ちを伝えた。勢いで言っちゃったけど大丈夫だよな。
「私たち、両思いだったんだね」
「ああ、そうだな」
ヒューーパパパン
最後の大トリの花火が打ち上げられた。ここからの景色はとても綺麗だった。
「花火、全然見れなかったね」
「まぁ、良いよ。こんな最高なことがあったんだから」
「あ、忘れてた」
俺は一つ大事なことを思い出した。
「どうしたの」
ななみが聞いてきた。
「今渡すのは変だけどこれ射的の時にもらったんだ。嫌なら外しても良いよ」
そう言って俺は射的の時にもらったペンダントをななみにつけた
「えっ嬉しいよ。外さないよ」
「良かったよ」
俺はななみの嬉しそうな顔を見て安心した。
「今日はいろんなトラブルがあったけど最終的には良いことがあって良かったよ。これからもよろしくな。ななみ」
「うん、よろしくー」
ななみはそう言って俺にもたれかかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人がイチャイチャしているときにひそひそとこんな声が聞こえた。
「あいつらようやく付き合ったぞ」
「本当、ようやくよね」
「俺たちがどんだけがんばったことか……」
「本当よ。今日の夏祭りもドタキャンして、ななみの好きそうなぬいぐるみを落ちそうになるまでお金もかけたものね」
そうこの二人はななみと翔と夏祭りを行く予定だった二人だ。
「なんで、こんなにがんばったのかしら」
「本当だよなー。まぁみているのが楽しかったというのもあるけどな」
「あいつらもう俺たちと遊ばなくなるのかな」
「大丈夫だと思うわよ。もしそうなっても私たち二人でも遊べるでしょ」
「……ああ、そうだな」
「なんで、少し戸惑うのよ……あ、」
「気づいたか。」
「まぁ、私はあなたは嫌いじゃないし」
「なんだそれ、まぁ俺も嫌いじゃないし」
「なにそれ、まぁ悪い気はしないわ」
「俺もだ」
ここにも新しい小さな恋が芽生えた。
二人っきりの夏祭り 鳴子 @byMOZUKU
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