煙草用の肺
煙草を吸う人間にとって今の時代は生きにくい。
いつでも禁煙禁煙と言われるし、吸う場所もどこもかしこも減っている。禁煙ブームというが、これだけ吸えないというのもストレスだ。
とはいえ「体に悪い体に悪い」と家族や友人に散々言われるので、自分でも少し気にしてしまう。
「最近じゃあ煙草のために人口肺に交換するのが流行ってるらしいぞ」
そんな話を煙草仲間から聞く。
「どういうことだいそりゃあ」
「何でも肺をすっかり機械にしちゃうんだと。一部義体化ってやつだな」
最近では手足をサイボーグ化することがすっかり流行っている。これまで特別運動をしていなかった人間であってもあっという間にオリンピックの記録を出せたり、器用になったりするということでだいぶ人気だった。
「それで肺を機械にしちゃうっていうのかい?」
「それで健康を維持できて、煙草を安心して吸えるならってことさ」
「むむむ」
そう言われると俺も気になってしまう。煙草は息抜きでどうしても吸いたいのだが別に健康を害したいわけではないのだ。
「どうしても吸いたいのなら」と肺のことを家族に話したところ強く勧められたものだから俺も人口肺に交換することにする。
これがなかなかカッコいい。
メタリックなカラーリングで、駆動する歯車を体を開くと覗くことができる。俺の呼吸を支えてくれている、というのも凄いが何より美しい輝きの歯車が噛み合い駆動するその様が規則的で美しいとすら感じた。
「これはいい買い物をしたものだ」
昔、バイクに嵌っていた時の昂りを自分に感じた。
「えっ、禁煙するのかい?あんなに煙草を空いたがっていたのに」
「肺のヤニ汚れが嫌でね……」〈了〉
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