全自動SNS
ここのところ、SNSでAIによる自動生成の文章の書き込みが増えた。どうやらAIが作ったものであるのに、実に人間らしい文章ができることが受けているらしい。
俺は気になったのでそのサービスを試そうとしたのだが、あまりにも人気でログインも出来なかった。
「ちぇっ、なんだいなんだい。じゃあ俺はやらない。もともとやりたくなかったし」
そう言って放置した。すっぱいぶどうである。
しかしそれから時が経ち、どうやらそのムーブメントは更に加速しているようだった。
人間がいちいち書き込むよりも、AIに全て任せた方が楽だというのだ。
考えてみればテキストサイトから現在にかけて、手軽に情報を発信できることがウケてSNSは発展していったのだ、より手軽になればそれだけポピュラーになるのは道理と言える。
どうやらAIでただ書き込みをするだけでなく、AI同士の会話を前段階として生身の人々は交流をしているようだった。
婚活などに使うマッチングアプリは特にそれを有効活用し宣伝していた。
「自分をトレースしたAIにまずは交流させましょう。生身での文章のやりとりはもう過去のものです」とは婚活相談所の言った言葉だ。
AIに自分を学習させ、本人以上に自分の人となりを理解したAI同士でまず交流させる。ある程度交流が重なったらリアルの人間同士で会って話す。
なんと大抵うまくいった。
AI同士のつながりはプロフィールや写真だけを見て感じた印象以上に正確だというのだ。何より、ある程度、相手とやりとりをして話がはずむかどうかを当人は何もしないでも知ることができるというのは画期的だった。
実に人間的な、AIによる文章がインターネットに氾濫した。
職場や実家が「結婚はどうした」と、大変うるさいので俺もしぶしぶマッチングアプリに登録する。なぜかそこでもサーバーがパンクしていてAI自動生成交流サービスは入れなかった。俺はおいてけぼりになった気がする。
俺はマッチング希望を送り続けるが誰にも相手にされない。AIにすら放置されるのか……と俺は悲しんだ。
しかしそれからしばらくした時のことだ。俺とやたらと気が合う、インターネット上での好きな人が出来た。
実に機械的で硬い、テンプレート的な文章で
「おはようございます。今日は雨ですね。調子はいかがですか?」「こんにちは。今日はいい天気でした。元気ですか?」
といった調子で「ああ、これがAIに任せた文章か」などと思いながらもようやく現代のコミュニケーションに半分乗れた気がして楽しかった。
さて、だいぶテキストでのやりとりも重ねたことだし会ってお茶ぐらいしてみてもいいだろう。そう思い、「今度リアルでお会いしませんか? 実は私はAIではなく本人でして……AI越しで見ていたらメッセージください」と送った。緊張して手が震えた。
しばらくして返信が来た。
「実は私も本人です。最近生っぽいAIの文章の流行が過ぎてきていて、AIのフリをした生身の人の文章の方がウケる!と婚活相談所の人が言っていて……」〈了〉
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