第2話 ルナ・マウセン
王都ルーベリアに近接する首都マニラ。
広大な敷地は綺麗に舗装されいくつもの建屋がたち並んでいる。
街を行き交う人々もまた千差万別。
行商人や大道芸人、はては兵士の姿まで拝むことが出来る。
途方もない砂漠の荒野に生まれた一つの奇跡。
…なんて言われた時代もあるがその例えは些か大袈裟だろう。しかし、最寄り街からここまで来るのに少なくとも数十キロはくだらない。
仮に飲まず食わずで砂漠を横断しマニラまでたどり着いたのであれば奇跡という例えも言い過ぎというわけではないのかもしれない。
また奇跡と言えば王都が主催する軌跡に奇跡を生み出す養成所・ルーベリア魔術学校も首都マニラで開校されていた。
世界を学び、世の理を知り、人々の暮らしに秩序と反映をもたらす。
ルーベリア魔術学校では度々こういった校訓を集会で唱い、生徒のつま先から頭まで浸透させてきた。
つまるところ魔術師とは人の上に立ち、人を導き、人を先導する選ばれた人種でなければならない、と。
(…くだらない)
教本を片手にコーヒーをすする。
古書に包まれた十畳ほどの店の中。黒髪のショートカットに紺色のローブを身にまとったルナ・マウセンは自嘲気味に鼻で笑った。
魔術学校の大半の生徒はそんな大それた役を担うつもりなど毛頭ないのだ。
魔術師とはエリート。
学校に通うというのはいってしまえば将来の保険である。
魔術師は誰もがなれる訳ではない。当然ながら適性があり、その才能は千人に一人といったところ。
最近はめっきり近隣諸国との争いがなくなったとはいえ決して油断できるものではない。いつ、どこの国が国土を広げようと画作しているかも分からない。
故に、魔術師は重宝される。
兵器として。
或いは新しい何かを生み出す魔物として―――
「なにが魔物だよ」
軒先に現れたひとりの男。
無造作に飛び交う短髪にくたびれたTシャツとジーンズ。
気怠げな表情と鋭い目つきが異様にマッチしているからか一見すると浮浪者を思わせる。
「…なによリックじゃない」
彼女は浮浪者などという勘違いはしない。
ため息交じりに出たのは男の名。
ルナはリックのことをよく知っているのだった。
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