ゆりけもの

七戸寧子 / 栗饅頭

トナヘラ『今日も罪を積み重ね』

いつも明るくて。


人を喜ばせるのが大好きで。


ちょっと向こう見ず。


トナカイのフレンズは、そんな優しい子だ。


でも、無茶をしがち。


それが、私はとても心配。


雪に埋もれているのを掘り出したことも少なくない。


凍えている彼女を家に連れて帰り、

毛布を被せて白湯を飲ますのも慣れたものだ。


「ヘラジカには、いつも助けらちゃうね」

なんて、ほっとしたように笑う彼女を見るのも。


何回も何回も見たから、慣れた。


慣れてしまった。




時々、友人に言われることがある。


あのトナカイって子に過保護じゃないか?


と。


その通りだ。


彼女が無茶をしすぎないように、壊れないように、


いつも横で「気をつけるんだよ」と声を掛ける。

時には、身をもって彼女を助ける。守る。


トナカイはそんなに弱くない。


危なっかしい部分はあるけれど、大抵の事は何とかできる力と知恵がある。


でも、万が一。


万が一、あの笑顔をもう見れなくなるかもしれないなら。


私が彼女を守らない理由はない。


そんな考えが良くないのは分かりきっている。


いつまでも守ってやっているのは、彼女のためにならないことくらい、分かりきっている。


でも、彼女は特別だ。


どうしても失いたくない。


どうしてもそばにいたい。


「ヘラジカ、好きだよ」


そう抱きついてくる彼女の温かさに、そんな想いが込み上げてしまう。


これは私が招いた事態だ。


私が彼女を守り、トゲがあるものに触れさせなかったばかりに。


彼女の特別な感情は私に向いてしまった。


本当は、彼女はもっと世界を知って、

私よりも彼女の隣が似合う人を探すべきだ。


私がそうさせなかった。


だからこそ、私が「君が好きというべきは私じゃない」と教えてやるべきだ。


彼女のために、言ってやるべきだ。


そう、分かりきっているのに。


「私も愛してるよ、トナカイ」


と、今日も彼女を抱き返してしまうのだ。

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