第10話

 クラス替えになり、俺は笹村や元友人達と離れたクラスになった。

 陸上部もやめた、居心地が悪くなったからだ。

 そのころ俺は、色々な中学の質の悪い連中から喧嘩を売られる日々を過ごしていた。

 来る日も来る日も喧嘩を売られ、そいつらをぶっ飛ばし、その繰り返しだった。

 そんなことが積み重なり、俺は近隣の中学では悪い意味で有名になりつつあった。

 

「なぁ……那須だぞ」


「あぁ、この前も他校の生徒を半殺しにしたとか……」


「マジかよ……同じクラスなんて最悪だな……」


 クラス替えをしても何も変わらない。

 俺は学校の嫌われ者だった。

 どうせ一年の頃と何も変わらない。

 そう思いながら俺はいつも通り一人で学校生活を過ごしていた。

 そんなある日……。


「なぁなぁ」


「あ?」


 俺に話しかけてくる物好きが現れた。

 

「んだよ……」


「いや、今日から同じクラスだろ? よろしく」


「……」


「え? 無視? なんで?」


「……うるせぇ……」


 俺はそういって席を立ち、教室を後にした。


「おい! もうホームルーム始まるぞ!!」


「……」


 俺は後ろからそう行って来るあいつを無視し、学校の屋上に向かって歩き始めた。

 この学校にまだ俺に話かけてくる奴がいたなんて……。

 そんな事を考えながら、俺は屋上で昼寝を始める。


「おい!」


「いつっ! な、何しやがる!!」


「だから、ホームルーム始まるって言ってんだろ、行くぞ」


「お前……」


 昼寝をしようとしていた俺に、先ほど話しかけてきた男が軽く蹴りを入れてきた。

 俺は驚き、起き上がってそいつの方をにらみつける。


「何すんだ……ぶん殴るぞ」


「え、やめて」


「は?」


「いや、やめて。痛いから絶対」


「……はぁ……」


 一体何なんだこいつは……。

 いままでなら、こういえば大抵俺の前から姿を消すはずだった。

 なのにこいつは、笑いながら俺にこう続ける。


「自己紹介まだだったな、俺は八重高志だ、これからよろしくな」


「………」


 こいつは俺の噂を知らないのか?

 俺は思わずそう思ってしまった。

 

「うるせぇ……俺に関わるな」


「おいおい~なんだよそれ~、どうせボッチだろ? 話しかけてもらえて嬉しかったくせにぃ~」


「あぁ!?」


「まぁ、コミュニケーションとか取れなさそうだもんなお前」


「おい、お前……俺の噂を知らないのか?」


「あぁ、なんか喧嘩が滅茶苦茶強い、極悪非道の最低男って事くらいしか知らないな」


「いや、知ってんじゃねーかよ……なら俺の機嫌をこれ以上損ねないうちにどっか行け、ぶっ飛ばすぞ」


「なんで俺がお前の機嫌なんか気にしなきゃいけないんだよ。ほら、さっさと教室行くぞ! 俺までサボったと思われるだろうが!」


「っち……お前いい加減にしろよ……一発ぶん殴らねーとわかんねーのか! あぁ!?」


 俺は八重の胸ぐらを掴んで脅した。

 これでビビッてもう俺に話かけてこない、そう思った。

 しかし、八重は違った。


「じゃあ殴ってみるか?」


「は?」


「だから、殴ってみるかって言ったんだよ」


「おまえ……なんなんだよ……」


 俺はそう言いながら静かに八重の胸ぐらから手を離した。

 これが俺と八重の出会いだった。

 それからというもの、こいつは事あるごとに俺に絡んできた。


「那須! 宿題見して!」


「うっせぇ、消えろ」


「さてはお前やってないなぁ~、ダメだぞ、ちゃんとやらないと将来ロクな奴にならないぞ?」


「その言葉自分にも返ってきてるって知ってる?」


 教室であろうが、廊下であろうが、八重は俺に絡んできた。


「那須! 一緒に帰ろう!」


「ふざけんな、誰がお前と」


「良いだろ? ほら、行こうぜ!」


 八重が俺に絡んできて二週間、俺が帰ろうとすると八重は俺の後についてきた。

 

「ついてくんな!」


「いや、俺も帰りがこっちなんだよ」


「嘘つけ! お前電車だろうが!」


「え? なんで知ってるんだ?」


「教室で話してるのが聞こえたんだよ! さっさと帰れ」


 そう俺が八重に行った瞬間、前の方から学ラン姿のガラの悪い集団が近づいてきた。

 こうなるから、俺は八重に早く帰れと行ったのだ。

 そいつらは一カ月前に喧嘩を吹っ掛けてきた、隣町の中学の不良たちだった。

 一カ月前のリターンマッチに来たらしい。


「はぁ……八重、さっさと帰れ……じゃまだ」


「ん? なんでだ?」


「お前なぁ! 状況を見ろ! 明らかに喧嘩が始まりそうな感じだろうが!!」


「あぁ、そうだよ~きみぃ~もしかして那須君のお友達かなぁ~?」


 ニヤニヤ笑いながら、リーダー格の不良が八重に話かける。

 

「おう、一応な!」


「違う」


「そういうお兄さんたちは?」


「あぁ、俺達も那須君の友達でさぁ~、今日は一緒に遊ぼうと思ってお誘いに来たんだよぉ~」


 ここは人気のない河川敷、どうやら俺が帰りにここを通る事を知っていたらしく、待ち伏せされていたらしい。


「おい、八重……どうなっても知らねーからな」


「え? 何が?」


 そう八重が言った瞬間、不良たちは俺に襲い掛かって来た。


「くっ!」


「那須くぅ~ん! 先月は随分好き勝手やってくれたねぇ~これはお返しだよ!!」


「はん! また帰りうちにしてやるよ!!」


 俺はそう言いながら、構える。

 正直八重の事はどうでもよかった。

 恐らく、この危険な雰囲気を感じてさっさと逃げただろう。

 そう思いながら、俺は不良たちを一人一人倒していった。

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