最高のお祭り~西条祭・御旅所
ユラカモマ
最高のお祭り~西条祭り・御旅所
深夜、各地区の名前の入った提灯で飾られただんじり(山車)を順繰りにしめ縄の前まで担ぎ手と呼ばれる人の手で運び差し上げ神様へ挨拶を行う。差し上げとは数百キロの重さのあるだんじりをせーの、そりゃっ、せーの、そりゃっと高く持ち上げ大きく上下に揺さぶることでありかなりのエネルギーが必要となる。担ぎ手の気合いの入った声と太鼓などの祭り囃子とともに揺すられる提灯の明かりはとても熱く美しい。特にしめ縄の横の石の階段の辺りから見ると透かしに彫られた精緻な細工が見えるほど向かってくるだんじりが間近に見え迫力が感じられる。またその斜め後ろからずらっと商店街の方まで続く車道一本半ほどの道には後続のだんじりが提灯に明かりを灯して自分達の出番を待っている。そのため祭の途中でこの道を通れば自ずとそれぞれ特色のあるだんじりや祭唄を味わうことができる。
挨拶の場の周囲には見物客やら既に挨拶を終えただんじりの面々やらが酒や屋台のたこ焼きなどを手にごったがえしている。会場周辺はちょっとした広場となっているため例年周りを型どるようには多く屋台が並ぶ。小腹が空いたとき眠くなったとき美味しそうなものを見つけたとき気軽に屋台で買って食べることができるのだ。しかし観客のいる場所は挨拶を終えただんじりの置き場も兼ねているため一つのだんじりが挨拶を終え置き場に向かおうとするとそれを避ける人で波ができる。この時くれぐれも油断して轢かれてはならない。西条祭り全般に言えることだがくれぐれも動くだんじりやおみこしに近づき過ぎないこと、それが何より重要なことである。
そして全てのだんじりが挨拶を終えた明け方4台のおみこしが提灯を垂らして駆け込んで来てしめ縄の前の道をねる。だんじりと違い大きな車輪の着いたおみこしは差し上げることはできないが代わりにシーソーのようにその大きな体を繰り返し前後に倒して挨拶を行う。また車輪のおかげでだんじりよりスピードが出るおみこしは挨拶の場から会場の入り口までの道を行って帰って行って帰ってと走りだんじりとはまた違う迫力を感じさせてくれる。
これは愛媛県西条市にて毎年秋に行われている西条祭りの中の「御旅所」の様子である。御旅所は10月16日に行われる統一運行の始まりだ。御旅所に集った70台を越えるだんじりはおみこしや神さまなど一部の例外を除きその後一日祭の終わるまで同じ路を辿る。大切な一日の始まりの行事である。西条祭りの中でも一番に有名な川入りはこの統一運行のフィナーレである。
西条祭りは私の地元の祭りであり私にとって最高の祭りである。基本人混みも歩くことも嫌いな私だが西条祭りのときだけは嬉々として出歩き人混みに混じる。それぐらい好きだ。しかし悲しいことに西条祭りはそれほどメジャーな祭りではなく県のニュースで扱われるのも基本最後の川入りだけだ。毎年毎年そんな感じで地方の番組でもお隣の新居浜祭りに比べ扱われることが少ないことから今回私の好きな御旅所について述べさせていただいた。夜、提灯の明かりが温かく灯り猛々しく揺れるのは素敵なのだ、本当に。提灯の明かりの中、生の太鼓の音に心臓を叩かれながら味わう祭りの熱気は私にとって他と比べようがないほど最高のものである。
最高のお祭り~西条祭・御旅所 ユラカモマ @yura8812
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