これからの修行
日差しが目に入り、俺は目を覚ました。
目からは涙が溢れていた。
「あぁ、またあの悪夢か」
俺がこの島に来てから12年。あの悪夢を
何度も見てきた。この悪夢がもし現実なら
酷く、そして悲しく、とても残酷だろう。
いや、12年も経てば薄々気付いている。
あの悪夢は、本当に起きた事だ。
俺は生まれてから4歳までの記憶が殆ど無い。覚えていたのは、名前と年齢くらいだ。
あの悪夢では俺は4歳児くらいの身体だった。
そして記憶が無くなったのも4歳の頃。
あの実際に起きた悪夢が俺の記憶を無くした
のだろう。そうなれば悪夢の中で俺を守って
くれた女と男は俺の両親かもしれない。
しかし残念ながらそれを確かめる術を俺は
持ち合わせていない。
しかも何度も見た悪夢は過程は違っても
必ず2人とも殺されている。
もうこの世界には居ないだろう。
でも俺は助けてくれたあの2人にどんな形でも
いいから恩返しがしたい。
そうすれば、俺も少しは報われるだろう。
「起きたかアベル。修行を始めるぞい」
白い髭を生やし、腰に刀を差している、
歳を取った男が入ってきた。
「うっす、で師匠。今日は何やるんすか?」
この男が俺の師匠。4歳から今までずっと俺に
修行をつけてくれた人だ。しかも師匠は
とても強い。一般的に壱ノ武器から伍ノ武器
の中で1つ出来ればいい所だが、俺の師匠は、
壱ノ武器から伍ノ武器を完璧に使いこなして
いる。ちなみに壱は短剣、弐は剣、参は刀で
肆は槍、伍は弓である。俺は師匠と同じくらいにまで使えるように最近なった所だ。
「今日から修行を自分で考えるんじゃ」
「修行を自分で考える?」
俺にとってそれは衝撃な発言だった。
今まで12年間の修行は基礎の繰り返しを
してきただけ。自分で考える事は1度もした事が無い。
「そうじゃ。お主は壱から伍までの武器は
使えるようになった。でも実際5つの武器を
同時に使えないならそれは1つの武器と変わらないんじゃ。そうじゃろアベル」
確かにそうだ。俺は普段弐ノ武器、剣を基本的に使っていた。もちろん後の4つも剣と同じくらいには使えるが、俺は使い勝手がいい剣をメインに、小さく持ち運びやすい短剣を
サブに使うくらいで他の武器は修行以外では
あまり使わない。
「だからアベル。お主に課題を2つ出す」
「全て同時に使える以外にまだあるのか?」
「2つ目は、陸ノ武器を完成させる事じゃ」
陸ノ武器。1度だけ聞いた事がある。
それは
「2つの課題を2年以内に完成させ、この儂を
倒す事が出来たなら、お主が島から出る事を許可してやるぞい」
「わかったよ師匠。2年以内に完成させて
腰を抜かさせてやんよ」
「良い意気込みじゃ。儂は力を貸さん。
課題を乗り越える近道はこの島を知る事。
では行けアベルよ。2年後またここでお主に
会える事を楽しみにしておるぞ」
こうしてアベルと師匠は別れ、2年後に向けて
日々の修行を始めるのだった。
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