反逆者ノ旅人
黒猫」
残酷
目を開けると女の背中と剣を構えて勇敢に立ち向かう男の背中が見えた。空は暗く、冷たい空気が張り詰められ今にも心臓が破裂しそうな場所だった。
『ここは何処だ?』
何故か声が出せない。身体も動かせない。
まるで自分じゃない誰かが見ている風景を見せられているみたいだ。
剣を構える男の周りには黒フードを被った人が何人も倒れている。そして俺と前にいる女をなんとか守ろうとしていた。
『俺たちは殺されそうになっている?』
心の声でしか俺は喋れない。何もできない 自分に腹立たしい。誰か、助けは来ないか?
このままでは3人とも死んでしまう。
「ごめんねアベル。こんな辛い事になってしまって。ごめんね…でも貴方だけは生きて…
お願いアベル。私からの最後の約束よ。」
そう言いながら女は身体に抱きついてくる。
俺の身体も女を抱きしめる。
『何言ってんだよ!みんな生き残るんだよ』
しかしこの声は届かない。
「原初ノ青、貴方ともお別れです。
ごめんなさい。貴方を守れなくて」
『原初ノ青?武器の名前か?』
「でも最後のお願い。この子を守って
俺の身体をシャボン玉の様な物に閉じ込めた。
『すげえ、まるで魔法だ』
「行きなさい。アベル。いい人に出会える事を私達は願っているわ」
俺の身体を閉じ込めたシャボン玉は徐々に浮き上がり、地面から離れていった。
それを逃さず、黒フードの奴は弓を放ってきたがシャボン玉は飛んできた矢を跳ね返すほど硬く、外の音までも聞こえなかった。
『なんだよ、これ…』
見えてきた風景は決していい眺めでは
なかった。そこには黒フードの奴が女の仲間を殺している姿が見えた。
しかも人数差が歴然だった。
女の仲間が約100人に対し、黒フードは1000人を超える。これは力の差で無く、量の差で潰されていた。
『クソ…俺はなんもできなかった』
仕方が無かった。俺は動けもしない、喋れもしない。見ることしか出来ない。
それも出来た所で足手まといだろう。
何故なら身体が4歳児くらいだったからだ。
シャボン玉は止まる事なく浮き上がる。
俺の身体は泣いていた。この後、数時間涙が
止まる事はなかった…
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