全部解決‼桃山刑事
さとうたいち
第1話 犯人じゃない感じの犯人がいない殺人事件
「殺害されたのは沢村静江さん、43歳。8月4日の午前1時から午前6時の間に殺された模様、です。桃山刑事。」
俺の名前は桃山乱歩。刑事だ。数々の難事件を解決してきた、あの、桃山刑事だ。
今日も事件が舞い込んだ。パッときて、頭を回転、サッと解決。桃山刑事だ。さあ、全部解決といこうか。
桃山「よし、で、なんだっけ。室田くん。」
室田「え?もう1回言うんすか?いや、聞いといてくださいよもー、毎回毎回。」
僕の名前は室田潤。数々の難事件を解決してきた桃山さんの部下だ。こう見えてピチピチの30歳。
室田「えっとですね、殺害されたのは沢村静江さん。43歳。8月4日の午前1時から午前6時の間に殺害された模様です。」
桃山「おし、ありがとう。で、容疑者はどんな感じかな?」
室田「小さい民宿ということもあって、容疑者は1人です。」
桃山「え?」
室田「そいつが犯人です。」
桃山「いや、え?」
室田「昨晩泊まったのは、沢村静江さんのみ。となると、民宿のオーナー安村邦彦。こいつしかいない。逮捕ですね。行きましょう。」
桃山「早いよ。」
室田「え?」
桃山「いや、見た?なんか、ちゃんと。見た?防犯カメラとかさ。」
室田「あ、見ました。ガッツリ映ってました。犯行現場。顔も確認できたんで、確定です。」
桃山「えー、せめてそれやらしてよー。なんかあれじゃーん。なにー。チケット余ったからってチケットもらってさー結局行かないやつじゃーん。」
室田「すいません、どういうことですか?」
桃山「終わっちゃったねってこと。仕事。終わっちゃったねってこと。」
室田「いや、まだありますよ。逮捕しないと。」
桃山「手錠、忘れてきたし。今日もってこいって言われてなかったからさー。室田くん、逮捕すればいいじゃん。」
室田「そんな、拗ねないでくださいよ。」
ガタガタッ!
桃山「え!?なに!?難事件きた!?きた!?」
ニャー
桃山「なんだ猫かー。猫!?なんで!?」
室田「民宿で飼ってる猫ですよ。」
桃山「あっさり行くなよー。室田くーん。難事件につながる猫なのか!次回!謎の猫!みたいになるかもしれんじゃん。」
室田「猫は次回には繋がりませんよ。終わりです。逮捕しに行きますね。」
桃山「室田くんて、そんな出世したいんだね。」
室田「いや、桃山さん、手錠持ってないんですよね!?」
桃山「うわ、こわい!そんな強い口調で言わないで室田。」
室田「はぁ。この際だからはっきり言いますけど、めんどくさいです。桃山さん。」
桃山「え、それ言う?この際ってどの際?」
室田「それがめんどくさいです。」
桃山「あーもういい。室田くんもういいわ。箱根湯本行ってくる。」
室田「なんでですか。職場放棄ですよ。僕ら、警察なんですからね。ダメですよ。」
桃山「警察だからダメなのかー?」
室田「警察じゃなくてもダメですけど。というか、人1人亡くなってるんですからちゃんとやりましょうよ。」
桃山「まあ、そうだけど。でもさー、死んでなかったらどうする?」
室田「いや、え?ありえないですよ。そんなの。遺体、僕見ましたし。」
桃山「精巧に作られた人形だったら?」
室田「そんなはず‥ちょっと電話してみます。科捜研的な人に。」
プルルル プルルル
室田「あ、もしもし。科捜研的な人ですか?」
「誰が科捜研的な人よ。科捜研よ。」
私は科捜研の女。鎌武ミコト。強そうな名前でしょ?あの沢口靖子もびっくりの女よ。
鎌武「それでなに?室田くん。」
室田「あ、あのー、昨夜の民宿安村で起きたあの事件のことなんですけど。被害者の方の遺体ってありますか?」
鎌武「遺体?死んでないわよ?室田くん。しっかりして。」
室田「え?僕現場で遺体見ましたよ?」
鎌武「あーあのね。あれ、人形よ。ちゃんと見てないのー?桃山刑事も桃山刑事だけど室田くんも室田くんねー。」
室田「え?な、え?す、すみません。え、でも血とか出てなかったでしたっけ?」
鎌武「あれ、イチゴジャム。」
室田「犯行現場見ましたよ?防犯カメラで。」
鎌武「あーそれ。偽装映像っていうか。うん。」
室田「え?」
鎌武「オーナーの安村と今回被害者としてる沢村。カップルなの。」
室田「え?」
鎌武「事件現場みたいなのを撮るのが趣味なんだってさ。ドラマみたいな感じのやつ?夕方くらいにやってるやつ?みたいなさ。やつよ。」
室田「え?」
鎌武「室田くん、ほんとになにも聞いてないのね。まあ無理もないか。室田くんと桃山刑事、避けられてるもんね。」
室田「追いつかないです。情報が。生放送の中継ですか?」
鎌武「桃山刑事のことだから、全部わかってるとは思うけど。暇だったのかしら。」
室田「え!?ちょ、すいません!ありがとうございました!」
プーッ、プーッ
鎌武「ふっ、若いって、いいわね。」
室田「ちょ!桃山さん!全部わかってたんすか!」
桃山「なに?電話の内容こっちにも伝わってると思うなよ!電話ってのはな!お前と電話先の人としか繋がれないんだよ!お前、スピーカーにしてないだろ!?」
室田「そんな怒ります?電話で。」
桃山「なんだよそれで!」
室田「今回の事件の内容、全部わかってたんですか!?」
桃山「わかってたよ?」
室田「なんで言わないんですか!?」
桃山「わかってたっていうか室田くんに聞いたし。うん。わかったに近い。」
室田「え…?聞いて、現場見て、事件内容を全て把握したということですか?」
桃山「え、うん。普通そうじゃないの?」
室田「す、すごい。やはり桃山さんは尊敬できる人だ。どうして、わかったんですか?」
桃山「どうしてって、え?いやだって聞いたし、見たし、それだけだよね?」
室田「瞬間でわかったと?」
桃山「まあ、聞いたしね。見たし。」
室田「うわぁ、すごい。桃山さんの下につけてよかったです!これからもよろしくお願いします!」
桃山「お、おう。頼むよ、ムロタン。」
室田「ムロタンてなんですか?」
桃山「あだ名だよ。そのほうが距離近いだろ?」
室田「あはは、そうですね。優しいなぁ、桃山さんは。いやぁー、でもまさか、ほんとに人形だったとは。いるんですねぇ。変わった人が。」
桃山「え、人形だったの?」
室田「え、はい。」
桃山「人、死んでないの?てことはなに?どういうこと?」
室田「え?わかってなかったんですか?」
桃山「うん。なにそれ。」
室田「なんだよ!さっきの返してくれよ!尊敬して損したよ!」
桃山「急になに?尊敬して損しないで。」
室田「ムロタンてなんだよ!気持ち悪いな!ムロタンて一生呼ぶなよ!桃鉄野郎!」
桃山「そんな悪いことしてなくない?あと、桃鉄野郎とはなに?1回くらいしかやったことないよ。」
室田「あぁ!クソ!すごい、なんか損した気分!宝くじ2万円分買って300円しか当たらなかったくらい損した気分!」
桃山「だいぶだね。まあさ、俺もなにもわかっちゃいないってことよ。だからさ、お前にもチャンスはあるからよ。そんな落ち込むなよ。」
室田「違うな!そこじゃないんだよな!ずれてるんだよな!福岡どーこだつって宮城指すくらいずれてんな!」
桃山「え?違うの?」
室田「数々の難事件、全部勘だろ!?」
桃山「お、そうだよ。すごいっしょ。指さしたら犯人その人なんだよね。」
室田「それは……すごいわ!すごいでした!なんかの能力者ですわ!それは!すいません、なんか。」
桃山「ま、いいよ。プリンはいつでも買えるし。」
室田「ずれてるな!ずれてるけど、ありがとうございます!」
桃山「よし、じゃ、帰ろう。署に。」
室田「はい!」
桃山「あとあの、怒るとタメ口になる傾向あるから気をつけてね。俺にはいいけど。」
室田「すいません!気をつけます!」
こうして、桃山刑事はまた、難事件を解決?したのであった。
次回の全部解決‼桃山刑事は、「キャラメルポップコーン、キャラメルかかってないとこはどうやって食うの?って唐突に聞いてきた人が事件の重要参考人だった事件」だよ。お楽しみに!
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