主人公
小さな頃から、美しさの中に醜さを隠し持ったものが好きだった。中に水晶が隠れた石より、メッキの塗られたプラスチックの方が好きだった。それは今も変わらなくて、だからこそ、僕は彼女に惹かれたのだろう。彼女は醜い。きっと、あの人には全てが美しく見えているのだろう。出会いも、別れも、全てが美しく見えている。だから、あんな目ができるんだ。あんな、物語の主人公のような。彼女は今を生きている。時の流れに逆らわずに、抗わずに、受け入れている。きっと、彼女は苦労を知っている。
若いうちの苦労は買ってでもせよ、なんて馬鹿みたいだと思っていた。だって、若いうちは買わなくても苦労だらけだし、買ったところで乗り越えなければ意味がない。買ったはいいものの一向にクリアできないゲームは、投げ出す他無いのだから。
だけど、そうか。きっと、苦労を繰り返せば彼女のようになれるのだろう。自分の人生の主人公に。大人に。子供に。道化に。哲学的自殺者に。
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