寒くて痛くて寂しい季節
ふっ、と目線を落とした彼女をみて、昔話をしようと思った。
「ずっと、冬は寒いだけだと思っていた。ただただ寒くて、痛い季節。僕が住んでいるところは雪も滅多に降らなくて。寒くて痛くて寂しい季節なんて要らないと思っていた。でも、君と居られるなら冬も案外いいものだなって、今は思っているよ」
ちょっとだけ、寒い台詞。ただでさえ寒いのに、さらに温度を下げてしまったかと不安になったが、彼女は笑っていた。
笑って、こういったんだ。
「冬は、一年の中で一番死人が多いって言われてるんだ。そんな季節を、君は、それだけの理由で好きになれるの?」
「うん。なれるよ」
なれる。なれたんだよ。たとえ、その一瞬だけだったとしても、なれたんだよ。そんな、馬鹿げた理由で。
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