冬の恋人。

御上

冬は寒い


 奇遇だね、私も、嫌いだよ。

 その一言に苦笑いで返す彼をみて初めて、私は私を認識できた気がした。

 ああ、と。思えば、この時からだろう。私が、彼を好きになったのは。これは、愚かな彼と彼以上に愚かな私の、やり直しのきかない、原点にして通過点でしかない今の物語である。



 その年の冬は、かなり寒い日が続いていた。一人で過ごすにはひどく侘びしい冬だった。冬の間、寒い期間限定の恋人。冬の恋人。いいかもしれない。

「あの!一目惚れ、しました」

ちょうどいい、かも。恋人という二文字を意識した瞬間の告白。いっそ、神様のお導きなんじゃないかと思うほどタイミングが良くて、冷たい乾いた風の中、口の端を上げて頷いたのだ。

「冬は寒いから。一緒にいよう?」

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