夏祭りに見る最高の多様性

雷炎

お祭り軍資金は斯くも安けり

 最高のお祭りとは何か?


 こんな質問に対する回答は人それぞれで無限にあると思うが、要は一番最後に 『楽しかった』と思えれば勝ちなのだ。


 お祭りを楽しむために必要な物は何か。


 友達? 恋人? 家族? 目当ての屋台?


 どれもこれも正解だろうが、特に小学生と中学生の子どもにとって一番大切なものは違う。


 そう、軍資金である。


 お祭りの屋台は高い! 例えそれが世間一般からすれば安売りであっても月のお小遣いが五百円、千円の子供からすればそれは正しく暴利となりえる。


 焼きそば三百円、焼き芋百円、射的二百円、スーパーボールすくい二百円、くじ引き二百円。これだけでもう千円が吹っ飛ぶ。


 お祭り用に親がお駄賃をくれることもあるだろう。だが、それを全て使うのは賢くない。小狡い子供は使い切らずに余った分を懐に入れる物だ。


 限られた軍資金を如何に使いお祭りを最高に楽しむか、これは全ての子供に与えられた命題かも知れない。


 尚、こちらがせこせこと金勘定をする中で親からお小遣いを阿保程貰ってお祭りで豪遊出来るブルジョアジーな友人が私は嫌いである。

 限られた軍資金で目一杯楽しみ、あわよくば余ったお金を欲しいものを買うための貯金に回す。そんな子供時代を過ごした身としては、後のことなど考えずに豪遊出来たあんちきしょう共は大変羨ま…憎たらしかったのである。


 兎も角、最高のお祭りとは如何に効率的にお金を使い、限られたリソースの中で最大限のリターンを得る。私はそういうものだと思っている。


 では、最大限のリターンとは何か、これは各人の環境によって酷く差別化される物であるので私の実体験を語るとしよう。


 私にとってお祭り最大の目的とは【食事】である。

 普段あまり口にしない、或いは特定の屋台限定の料理を食べる事が最大の目的であった。

 私の基本的なお祭り用のお小遣いあ五百円。これで会場全ての屋台を巡るなど到底不可能。ならばどうするか? 私の選択はお祭りの屋台が販売を始める直前に、会場全体を見て回り、この時点での混雑状況と張り出された値札、作りかけの料理とそれを盛るお皿の大きさから一番楽に沢山ありつける組み合わせを探すという、今になって考えればよくもまあそこまでやったなと言いたくなる事であった。


 その経験から言うと、お祭り屋台のたこ焼きと焼きそばは地雷であった。

 まず定番故に並んでいるお客の数が酷い。向こう三つ先の屋台の隣まで列が延びているなどザラであり、並んでいては他の屋台に行く時間を失ってしまう。故にもし焼きそばないしはたこ焼きが食べたい時の最適解は、最後にするか、既に並んでいる身内や友人に自分の分も依頼することだった。そして純粋に値が張るのも私を戸惑わせた。


 金額の面では他の焼き鳥や綿あめなども似たり寄ったりである。

 だが、そんな中で私はついに見つけたのである。値段がそこそこ安く、列もまばらながらこれは食べる価値があると思わせる一品を売る屋台が。




 その名も【地方屋台】である。


 地方屋台とは私が勝手に呼んでいるだけで、要は他の地方の特産品や、伝統料理などを売る屋台である。

 こういった地方屋台には二種類ある。広告店と出張店だ。この二つも勝手に私がそう呼んでいるだけだが、要は地方都市のPR目的の店と地方の人気店の出張サービスのお店があるのだ。


 この後者の出張店が素晴らしい。広告店がダメと言うわけではないのだが、出張店とは基本的に地方で離れた県に出張できる程に大成功したお店なのだ。


 そんなお店の料理が不味い筈なかろう!


 実際出張店の料理にはずれは滅多に無かった。惜しむらくは基本的に出張店は一度であった後にもう一度出会える事が早々無い事である。


 以上の経緯から私にとって最高のお祭りの定義は【まだ見ぬ地方屋台の料理を食べ歩くこと】となっている。一生に一度しか食べる機会の無い物がとても美味しかった。そう言った記憶は今も脳裏に焼き付いており。偶に思い出しては名も思い出せないお店をどうにか見つけれない物かと調べるのである。


 以上、長々と私にとっての最高のお祭りについて語りましたが、みなさんにとって最高のお祭りの定義とは何でしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏祭りに見る最高の多様性 雷炎 @raien

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ