水菓子 夢愛娘 怖い短編集

@kyoukinosata427

第1話 寡黙なダーリン

「ねえ、貴方、今日は貴方の好きなミニストローネスープを作ったの。」

妻は夫に嬉しそうに言う。

「……。」

しかし、夫はボーッとしていて食べようとしない。

「もう、しょうがないわね、はい、あーん。」

妻は夫のパカッと開いた口にスープを一口流し込む。

「美味しい?」

妻は微笑み聞く。

「……。」

夫は何もいわず、妻を見つめている。

「うふふ、良かった。」

妻はにんまり微笑む。

「……。」

夫は口を開いたままでいる。

それを見た妻は、

「しょうがない人。」とミニストローネスープを一口流し込む。

しかし、量が多かったのか口から溢れてしまった。

「ごめんなさいね、貴方。」

妻は慌てて、タオルで口に付いたスープを台布巾でテーブルに付いたスープを拭いた。

「服を取っ替えないとね、でも、この刺さってるのが邪魔よね。」

妻は夫の赤く滲んだ腹部を見て微笑んだ。

尽くす妻と寡黙な夫の楽しい夕食はまだまだ続くようだ。

この荒れたリビングで。

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