最高のお祭り

アキノリ@pokkey11.1

俺と未来(ミク)、未来への道

俺の名前は山彦。

山彦達弘(ヤマビコタツヒロ)。

高校二年生、16歳、短髪、県立高校に通っている。

ヤマビコだからクラスではヤマとからかわれる。


突然だけど君達は末期の小児癌の幼馴染が居るとして.....どう接するだろうか。


幼馴染の名前は前園未来(マエゾノミク)。

16歳、高二。

ボブヘアーで俺視点で顔立ちがとても整っている美少女。

唇とか潤っていて目が大きく.....可愛い。

だけど.....唯一彼女には他の人と違う点が有る。


今現在、未来は酸素ボンベが無いと生きられない様な末期癌の少女なのだ。


発症当時は胃の癌で。

そして.....徐々に判明した身体中に転移した。

肺とか全身にまるで.....インクを滲ませる様にだ。


気分がずっと悪く.....何も食べれない状況が続いていたそうだったらしい。

その様子を不安に思った未来のご両親が病院に連れて行くと。

末期の胃がんと診断された。

時既に遅し、だったのだ。

若いから進行が早かったとも言える。


余命は.....半年だった。

診断されたのが三月ぐらいだ。

それから丁度.....色々な思い出作りをして半年まであと一月近くとなった七月の事。


実のところを言うと俺は未来が大好きだ。

だから.....亡くなる事が信じられなくて泣いた日もあった。

だけどそんな事をしても状況は何一つとして変わらないと思って.....俺は立ち上がる事にしたのだ。


今は全力で幼馴染を楽しませようと必死にやっている。

そんなある日の休みの事。

未来は病室で衰弱していく日々を過ごす中、言った。

俺は.....その言葉に思いっきり見開く。


「私ね死ぬ前に.....達弘と一緒にこの街のお祭りを楽しみたい」


と、だ。

何故見開いたかと言えば.....実は。

こんな衰弱している身体を外に見せるのが嫌だから、と病院から外に出るのを未来は控えていた。


その事もあって俺は剥いていたリンゴが手から落ちる。

死ぬ事を前提にしている。

そんな気が.....して涙が浮かんだ。

俺は未来に駆け寄る。


「.....未来。お願いだ。そんな最後みたいに言わないでくれ」


つい、その様な言葉を発してしまった。

我慢していたのに、だ。

それから俺は涙が止まらなくなってしまう。

未来はそれを知って病室の窓から外を見ていてそれから言葉を発した。


「.....達弘。私ね、生まれ変わりをしようと思ってる。だから.....寂しく無いんだよ。でもそれをする前に最後に達弘と行きたい。今年のクリスマスまで私は生きれないと思うから.....私、死ぬ前に色々と思い出を作りたいんだ。私、多分余命通りに死ぬって分かる。だって思いっきり痩せているから。私は達弘に.....」


と未来はそこまで言い掛けて、首を振った。

赤面をしながらだったので熱でも有るのかと思ったが。

気にしていると未来は俺を見ながら笑みを浮かべた。

そしてこう言う。


「.....お祭りに行ったら教えるね」


「え?何を.....?」


「.....私の全てを、だよ」


人差し指を唇に添える未来。

それから時間は巡り。

一月、経った。

幼馴染は酸素ボンベ無しには生きられなくなる程、衰弱した。

俺は.....そんな弱くなる未来を見ながら病院に必死にお祭りへ行きたいと許可を取ったのだが。


だけど病院からは許可は下りる事は無く。

俺は仕方が無いと思い、未来にその事を告げようとした。


だけど歩いている最中。

それで良いのか?と思ったので別の事を言った。

それは病院を無断で抜け出す事だ。

馬鹿な事をすると思う。


思いっきり叱られるかも知れない。

だけど未来にはお祭りを見て欲しかった。

だから俺は未来に告げる。

出るぞ、病院から、と。


「未来。行こうか」


「冒険だね」


そんな未来は納得してくれた。

俺はお姫様抱っこで点滴をしていない日を狙い未来と共に病院を抜け出した。

それから用意していた車椅子と酸素ボンベと共に祭り会場まで向かう。


その途中でコンビニのトイレで俺は未来と他の人に見つからない様に洋服をお祭りムードの服に着替える。

未来は少しだけ息切れしていた。

俺は一人じゃもう動けない未来の着替えを手伝う。

未来は少しだけ恥ずかしがっていたが頷いた。


酸素ボンベは満タンを持ち出せなかったので一応、用意出来た酸素ボンベの残量も気にしながらの心配も有るが楽しもう。

思い、未来を見る。

華やかな綺麗さだった。


「.....綺麗だ」


「こんな事まで。.....有難うね。達弘」


あと一月。

胸が常人じゃ無い程に苦しくなる。

思いながら.....車椅子に未来を抱えて乗せると未来は俺の手を握った。

痩せ細ったか細い腕で、だ。


「.....達弘。大丈夫。私は.....まだ」


「.....御免な.....弱いんだ。涙が止まらないんだ」


人に見られているのに号泣してしまった。

お前が好きだから、とはとても言えないけど。

何ていうか言ったら何が起こるか分からないから怖いんだ。

だからとてもじゃ無いが言えない。

と思っていると。


「達弘」


「.....何だ?未来」


「.....お祭り.....楽しみだね」


未来は痩せた顔の中、笑顔を見せる。

俺は.....目をグシグシ拭う。

それから.....頷く。


「.....ああ。楽しみだな」


もう.....時間が無い。

バレるかも知れないし、酸素ボンベが言う事を聞けば良いんだが。

思いながら50メートル先に有るお祭りの会場を見つめる。

さあ、楽しませるぞ未来を。


「じゃあ行こうか」


「そうだね。達弘」


そして俺達は笑み合い移動を始めた。

本当に急ごう。

それから楽しませよう、未来を。

後悔しない思い出を作ろう。



「りんご飴とか有るな、食べれるか?」


「そうだね.....でも今は食欲無いな。ごめんね。祭りの風景を楽しみたい」


「分かった」


一八時、お祭りが始まった。

俺は未来を見る。

比較的には大丈夫そうな様子だ。

それを確認してから未来の背後から車椅子を押していく。


「未来」


「何?達弘」


「いや、やっぱ良いわ。ごめん」


「.....?、あはは。変な達弘」


クスクスと笑うその顔に俺は惚れ直す。

心から好きと言いたい。

でも傷付けるんじゃ無いかって.....怖がっている。

だけど好きなのだ。


でも俺はこのお祭りで未来に告白しようか考えた。

未来と一緒に幸せを噛みしめたい。

だけど、と悩んでいると。


未来が、あ、と言った。

花火会場に来た時に、だ。

何かが落ちている。


「大変、財布落としちゃった。拾ってくれる?」


「あ、それはヤバいな」


と、拾おうと未来の前にしゃがんだ瞬間。

俺の唇が未来の唇で塞がれた。

驚愕して見開く。

そしてキスの形になった。


「.....ファーストキスだよ。達弘」


「.....お、お前.....!?!どういう.....!?」


「なかなか私の前に立ってくれないからね。それとこの花火会場で言いたかった事が有るの」


ドーンと花火が上がった。

俺はそれを見つめながら驚愕の眼差しで未来を見る。

すると未来は満面の笑顔でこう告げた。

それは.....予想だにしなかった言葉だ。


「大好きだよ。達弘」


「.....!」


未来は、えへへ、と可愛らしく歯に噛む。

その言葉は俺が言いたかった言葉だったのに、と思いながらも.....俺は未来の手を優しく握った。

生涯、と呟きながら、だ。

そして未来を見つめる。


「お前を生涯の伴侶にする。俺もお前が大好きだ」


「.....え.....?」


「.....お前が.....将来、結婚出来る様になったら.....結婚したい」


「.....」


未来は久々にポロポロと涙を流した。

それから俯いて口元に手を添える。

そしてポツリポツリと呟く。

糸がまるでほつれそうな感じの言葉を、だ。


「.....お嫁さんにしても私は妊娠出来ないよ?」


「.....構わない」


「将来が安泰もして無いんだよ?」


「何を言ってんだ。お前が先に告白したんだろ」


でもそのお嫁さんってと思っている未来の左手薬指に指輪を嵌めた。

バイトでの給料を貯めて買った。

高い物だけど未来の為に頑張ったのだ。


後悔は無い。

と言うか有る筈が無い。

そして俺は未来の両手を握って告げる。


「大好きだ。未来」


「.....私こんなに幸せになって良いのかな」


「.....当たり前だろ。お前なんだから」


号泣する未来の唇をまた塞いだ。

未来が要求したから、だ。

その日の事は生涯、忘れる事は絶対に無い。

未来はその一ヶ月後.....亡くなった。



未来が登っていく。

解放された様に白い煙になって、だ。

俺は火葬場で未来の亡骸を見ながら号泣してしまった。

未来の左手薬指に亡くなる直前に指輪を嵌めてあげたのだ。


「病院からも散々怒られたけどこれで良かったよな未来」


黒い制服に身を包んでいる俺は左手を見る。

そこには未来から貰った手作りの指輪が嵌っている。

それは折り紙で作られている。

俺の生涯の宝物だ。


そして未来の生きた証だ。

未来は最後に言った。

俺に一日でも長く生きてね、と、だ。

とっても、楽しかったよ、と、だ。


俺は左手の折り紙で作られている指輪を触りながら未来が居ると思う空を見た。

そうだな.....後悔が無いと言えば嘘になる。

だけど八月に連れて行ったあの記憶は後悔が有る筈が無い。

俺と未来だけの最大の秘密で有る。


未来、天国で幸せになってくれよ。

俺が歳を取って死ぬまで待っていてくれ。

約束する。

長生きするよお前の分まで、だ。


そして俺は何処までも透き通る様な青い空を一時間ほど見つめていた。

俺の両親もそれには文句は言わなかった。

それから最後に空に向かって呟く。


「未来。.....永遠に愛してる」


と、だ。

するといきなりつむじ風が俺を巻き上げた。

ブワッと、だ。

多分それは俺への未来なりの返事だったのかも知れない。


fin

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