第13話 ふたりっきりで、夜の鍛錬。

 鍛錬を続けていたら最終下校時間になったので、俺とリベルは運動場を後にした。


 やってきたのはリベルの寮室。

 女子寮に潜入する形だ。たいへん興奮する。


「スンスン……。不思議だ。少女の私室というのは、どうしてこうも良い匂いがするのか……」


 すでに窓の外は暗くなっている。

 リベルがランプに火を灯すと、部屋の全貌が明らかになった。


 机とベッド、そして小さなクローゼット。

 それだけでいっぱいになってしまうほど手狭な部屋だ。


 学則によると、実技の成績に応じて部屋のランクも上下する決まりらしい。

 早く落ちこぼれを脱出し、リベルにはもっと良い部屋に住んでほしいものだ。


 そうは言っても、部屋はよく片付いている。

 リベルは綺麗好きなのだろう。


「スンスン……ではリベル。再びえっちな気持ちになってみようか……スンスン」


「あぁっ……ゼクスさんがわたしのお部屋のニオイを……! 嗅がれてます……わたしの恥ずかしいところ、全部……んんぅっ!」


 おぉっ、すでにリベルの瞳が潤んでいる。それに頬も赤い。もう一押しだ!

 次なる一手を考えていると――。



「わたし、えっちな気持ちになっちゃいますよぅ……!」



 リベルがえっちな気持ちになった。

 赤面が強まり、はぁ、はぁん……と呼吸も色っぽく乱れている。


 すでに魔力の波が安定しているので、このまま夜の鍛錬に移行できそうだ。


「ゼ、ゼクスさん……はぁ、はぁ……わたし、何をすればいいですか? な、なんでも命令してくださいっ」


 小さな背丈とは不釣り合いなほど淫靡な表情だが、これはあくまで魔法の鍛錬。お下品な要素など皆無である。


 俺は少し考え、



「スカートをたくし上げるんだ!」



 夜の鍛錬メニューを発表した。


「は、はぃぃ……」


 俺に命じられるまま、リベルはスカートの裾を両手で掴んだ。


 そして、たくし上げる。

 薄暗い部屋の中、恥じらいに耐えるように、ゆっくり、ゆっくりと。


 短いスカートに隠れていた太ももが、だんだん露わになっていく。スベスベと柔らかそうな、無垢なる少女聖域が……!


「――そこまで!」


「ひゃん!」


 俺が待ったをかけると、リベルはすぐに手を止めた。


 あと一瞬でも制止が遅れれば、清楚・可憐・高潔の体現である純白の綿ぱんつが、俺の視界に飛び込んできただろう。


 しかし、それではえっちすぎる。


 ランプに照らされた薄暗い室内で、少女が恥じらいながらもスカートをたくし上げ、綿のぱんつを男に見せつける――うーむ。やはり、えっちが過ぎる。


 今宵の鍛錬に必要なのは、あくまで太ももなのだ!


「リベル――揉むぞ!」


「えぇっ!? ゼ、ゼクスさ……ひゃぁんっ!」


 俺は床にひざまずいて両手を伸ばし、リベルの太ももを優しく掴んだ。


 ふにゅっ……ふにゅにゅん……ぷにぷにぷにぷに……。


 まずは右の太ももを、両手で揉みほぐす。

 太ももの外側を指先でくすぐり、内ももの最も柔らかい部分を、ぷにぷにと弄んだ。


「んあぁぁっ! く、くすぐったいですよぉ……! ひゃっ、ゼクスさぁん! そこっ…ひぁんっ! あっ、あっ、ふぁぁっ……!」


「それだ、リベル!」


「ふぇっ!?」


「そのくすぐったさに耐えながら、体内の魔力属性を変化させていくんだ。今回は雷と炎を交互に!」


 ぷにぷにぷにぷに……。


「んんっ……で、でもわたし、固有スキルは雷で……炎は苦手なんですよぅ」


 固有スキル。

 編入試験でアイリスとユリーヌも言っていたが、その内容を改めて教師に質問したところ、噴飯ものの概念だった。


「いいか、リベル。固有スキルなどというものに囚われてはいけない。アレは己の可能性を狭める悪習に他ならないからな」


「えぇぇっ!?」


「現代の魔法使いは、それぞれ得意とする属性の魔法を『固有スキル』と言い張っている。だが、俺の時代は多数の属性の魔法を扱えて当然だったんだ」


 ぷにっ、ぷにゅんっ……ぷにににっ。


 あぁ……素晴らしきかな、リベルの太もも。

 いつまでも触っていたい……。


「一つの属性だけを修めるのは、むしろ効率が悪い。他属性の魔法が、元の属性の魔法と関係してくる例も多いからな。俺自身、元の属性の魔法が伸び悩んでいるときに関連する別属性の魔法を鍛え、自分の壁を超えたことがある」


「す、すごいです! 勉強になりますっ! ……ひゃうんっ!」


 リベルが俺の説明をメモに書きつけ、何度もうなずいてみせる。


 その間も、俺は太ももを揉み続ける。


 ぷにゅんっ、たぷたぷっ、たぷたぷたぷ~っ。


 内ももの付け根に近い、やや肉厚な部分――ここが最も美味であると、俺は思う。


「あぁぁ……さ、触り方、えっちすぎますよぉぉ……」


 そう言いながらも、リベルはメモを置いて体内の魔力を操作し始めた。


「んんんっ、んぅぅうっ……! や、やっぱりくしゅぐったいぃぃ……!!」


 リベルは腰を引いて逃げようとするが、俺の〝揉み〟はそれを許さない。


 ぷにぷに、たぷたぷ、むにむにむっちり。


 えっちな気持ちを維持してもらい、より精度の高い鍛錬を行うのだ。


「あぁぁっ……はぁぁ、んんん……っ! んぁぁ……ゼクスさんの手……おっきぃぃ。あったかくて、ゴツゴツしてて……。これが男の人の……はぁ、はぁぁ……」


 すると、どうだろう。

 リベルの魔力が安定し、雷――炎――雷――と、順番に属性が変化していったのだ。

 炎への変換効率は微妙だが、ひとまず成功である。


「いいぞリベル! 上手いぞ!」


 次は左の太ももだ。

 膝の上あたりから脚の付け根に向かって、つぅ――っと指を這わせる。


 リベルの身体がぶるっと震えた。


「ひぁんっ! ゼ、ゼクスさぁん……あと、ほんのちょっとで……んんっ。わたしの一番大切なところ、ツンって触っちゃいそうでしたよぉ?」


 恥じらいながらも、どこか挑発的な口調である。


 官能的に腰をくねらせているし、彼女も盛り上がっているようだ。


「それは失敬。過ぎたるえっちは及ばざるがごとし――だな」


 今さら気づいた。

 ひざまずいた姿勢で視線を上げても、リベルの顔が見えないのだ。

 豊かに隆起したやわらか山脈が、視界のすべてを支配するのである。

 

 眼福――。

 お乳様の本領発揮といったところか。


「ともあれ、属性変換は順調だ。少し難易度を上げてみようか」


「三つ目の属性を入れたりするんですか?」


「いや、模擬戦までには時間がない。より少ない労力で、炎と雷の属性を操ることに集中した方がいいだろう」


「わ、わかりましたっ」


「よし。それでは、別のことを考えながら、炎と雷の属性変換を繰り返すんだ。……そうだな。歴史学をざっくり復習しよう」


 むにゅっ、むにゅう~っ。


 手のひらで内ももをこねる。

 あぁ、今すぐ口に含みたいほどの柔らかさだ。

 まるで最高級のパン生地のような……!


「ひぅっ……じゃ、じゃあ、二〇〇〇年前の神話からぁ……ぁぁんっ!」


 リベルは赤面したまま言葉を連ねていく。


「に、二〇〇〇年前……魔導王と呼ばれた大賢者ゼクス・エテルニータ様……ゼクスさんと、勇者の少女レヴィ・ベゼッセンハイト様が率いるパーティーの活躍によって、金剛処女神・ユニヴェールは地下深くに封印され……ひぁうっ!」


 かわいく喘ぎながらも、リベルは説明を開始した。

 その間も、体内では炎、雷、炎――と属性変換が起こっている。


 そう。

 俺の相棒だったレヴィ・ベゼッセンハイトもまた、現代まで名前が残っているのである。


 俺が金剛処女神ユニヴェールを封印し、世界に平和が訪れたことで、あのパーティーは解散となった。


 しかし、俺は感じていた。

 このときユニヴェールに行った封印は、不完全なものだったのだ。


 奴を封印できるのは、およそ二〇〇〇年だけ――。


 ゆえに、今度こそユニヴェールに完全なる封印を施すために、俺は転生を決意したのである。


 祝勝ムードに沸き立つ世界に、水を差すことはできなかった。

 だからこそ、俺は誰にも真実を告げずに転生を実行したのだ。


 二〇〇〇年前の尻拭いをするために。

 レヴィをはじめ、他の仲間たちは、その後どんな人生を歩んだのだろう。

 どうか幸せになっていてほしいものだが……。


 ぷにんっ、ぷにゅぷにゅっ。


 リベルの太ももがもたらす幸せな肉感が、俺を感慨から呼び戻した。


「ん? 少し属性変換の精度が落ちてきたな。集中するんだ」


 ふにっ。

 ふにふにふにふににんっ。


「あぁぁっ……触り方、やらしっ……ぅんんっ! そ、そうして世界は平和になって……はぁ、はぁん……。で、でも一〇〇〇年前に人間同士の大戦争が起こってぇぇんっ! んんっ……六〇〇年前にぃぃっ! 魔神の娘を名乗る魔族が現れてぇぇぇ!」


 炎→雷→炎→雷。

 属性変換が安定してきた。

 なかなか筋がいいぞ。

 太もももいいぞ。


 やや乱暴に、左右の太ももを掴み直す。

 むにゅうぅっ、と指先が柔肉に埋没し、リベルの呼吸が淫らに跳ねた。


「んふぅぅぅっ! 五〇〇年前に魔神の娘を追い詰めてぇぇん……っ! でも、彼女は消滅する間際に自らの肉っ……にくたいを邪悪な胞子に変化させてぇぇ……! 世界中にひぁっ、ぁんっ! ば、ばらまいちゃったんですよぉぉぉ……!」


 さすが座学の優等生。

 歴史学の教科書によると、そうして世界中に散らばった邪悪な胞子が、たくさんの動植物を魔なるモノに変えてしまったそうだ。


 それから先の二〇〇年は、各地で人と魔族の激戦が勃発していたらしい。


 歴史的には『人魔大戦』と呼ばれる二〇〇年戦争である。


 それが終息したのが、今から三〇〇年前だ。


 人間同士の大戦争。

 人と魔族の人魔大戦。


 たくさんの命と文明が失われたそうだ。

 現代の文明が二〇〇〇年前と大差ないのは、こうした大戦争のせいで何度も文明が衰退したからである。


 人魔大戦がきっかけとなり、魔の勢力は縮小していった。

 当時の人々の奮戦が人類を救ったのだ。


 そうして生き残った人々が少しずつ文明を再建し、現在に至るのである。


 とはいえ、今でも魔獣や魔族は存在する。

 トラブルが起こった際には、各地の魔法使いや騎士団が対応に当たっているとのことだ。


 人魔大戦後の三〇〇年は、魔族の勢力拡大は確認されていないので、人間側の優位が保持されている。

 ……という考え方が主流なのだとか。


 おっと。

 声が聞こえなくなったと思ったら、リベルの息が上がっている。それに汗だくだ。


「はぁ、はひっ、はぁん……」


「よし、少しばかり休憩しよう。集中力を回復させ、もっと速いスピードで属性変換をやってみるんだ」


「は、はぃぃ……。あぁぁ、お腹の奥……んぅっ、あ、熱いですよぉぉ……」


 もどかしそうに腰をくねらせるリベル。

 気のせいか、部屋の湿度が上がったような?


「さて、そろそろ最後の追い込みに……」


 太ももを揉みしだきながら、俺が口にしたときだった。


「はぁっ、はぁん……あぁあっ……!」


 リベルが小さな身体を震わせる。

 愛らしいのでどんどん揉む! 揉む! 揉む!


「あぁぁもぅ! ぜくすしゃんのモミモミ、えっちしゅぎてぇぇ……がまん、無理ぃっ、むりれすぅぅ! わたひっ……あぁっ! どんどん熱くなってぇぇ……ひぅっ、ぁぁぁっ……も、もぉらめえぇぇえええええええっっ!!」


 ビクン! ビクン!

 耐えきれないとばかり、リベルが上半身を弓なりに反らせた。


 ……ぺたん。


 その場にへたり込むリベル。


「ハッ……はぁっ……んんっ、はぁぁっ……」


 不規則に呼吸を弾ませ、玉のようなお尻をヒクつかせながら、スカートの股間を両手で押さえている。


「こ、これは……。や、やはり今日はこれぐらいにしておこうか?」


「ひゃい。あ、ありあとうごひゃいまひは……」


 ――ドン!


 隣の住人が壁を蹴ってきた。


 だが、これで確信したぞ。


 リベルの左目――前髪で隠れている瞳は今、まばゆい金色に輝いている。


 この光が意味する絶後の特性に、俺は胸を熱くした。


 上手くすれば、あの三人のいじめっ子にとびっきりの復讐ができるかもしれない――。

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