なつまつり

宝希☆/無空★むあき☆なお/みさと★なり

第1話

まつりは夏祭りしか参加したことがないので、私にとっての「最高のお祭り」は夏祭りになる。毎年楽しみしていた夏祭りが、予算不足の為に、中止になり、広い範囲の自治会で募金をして花火大会に変わってしまった。昔は盆おどりが好きだった(練習不足と体調のせいで今は踊れない)ので、近所で盆おどりがあったら行っていた。「河内音頭」と「炭鉱節」と「はなさか音頭」なら、踊ってる人達を見て、うきうきわくわくする。優雅な女人の舞いではなく、どたばたする踊りを楽しんでいた。

近所から遠方までの、おっちゃんやおばちゃん達が祭りでサークルとして踊れる様な勉強会をひらいているのに一度だけ参加させてもらい、無邪気に躍り続けた後、真夜中のど田舎の公衆電話(パトカーも(お金も無いから)タクシーも呼べない)もない、知り合いもいない団体の中においてけぼりにあってしまった。仕方がないので、昔はハイキング用の山を連チャンする根性があったので、真夜中、知ってる道をとぼとぼと歩いて帰った。後で聞いた話だが、その辺りは薬物の取り引きの事件があったところらしく、花の高校生一人でよく自宅に着いたわと思った。あまりにもしんどかったので、かっての無人駅でベンチに寝転び仮眠というよりは肺と足を労った。そんな話が愛する母に出来ていないのは私が弱虫だったからだろう。ひとつ間違えれば薬物中毒患者か死体か性的暴行を受けていたかもしれないのに。人の噂を聞くと近所のおばちゃんは「人脈つくり」に協力しなきゃいけないと思い、私を一人っきりに帰宅したらしい。最初は「人脈」が「人間関係」だったので、ラブストーリーで学生えっち込みのやつですかー?と正気を疑った。何せ、その頃の私は下着売り場に行けないくらいシャイだったからだ。そんなシャイな私が田舎のおっさんとワンナイトラブ?あり得ないあり得ないと泣きわめきそうになった。

だから?「最高のお祭り」は、私が最後に踊った盆おどりの祭りと思いかけて、あたたかい家族の話を思い出したので書くことにする。父も母も存命で、私がまだ単身赴任になってなかった頃、毎年高校の裏道の半ばあたりに車を止めて、家族で花火を見て楽しんだ。毎年恒例の行事だった。そんな時、率先するリーダーシップのある父が頼もしく思えた。車が込み合う(何故、つむと言ってはならないのだろう?)ので最後まで待たずに運転をしない私らだけが走る車の中から最後の柳花火?を楽しんだ。だから父も母も亡くした闘病人の私にとってその「最高のお祭り」を彷彿するあのお祭りも特別な思い出になった。単身赴任後、事件に巻き込まれて、実家療養になった私にとって最初で最後の花火の見物になるのだが、妹が「おらおら」で車を運転して花火が見えるスポット色んな場所を探してくれた。車を運転出来なくなっていた私と姉には嬉しいお祭りだった。小さいときは要領の悪かった妹が、今では抜群の行動力で、降りかかる火の粉を払うが如く、対向車や細い曲がった道をさばいていく。そのたくましさと実現能力に「ひゅーやるー」と心がどきどきした。けっきょく誰もいない川辺に車を止めて、残りの花火を見た。一回だけあった妹の真心や根性がこもった花火の観賞が「最高のお祭り」に匹敵する。妹が父の様に、カッコヨク思えた瞬間だった。それも「最高のお祭り」かもしれない。怖いこともあったが、嗚呼楽しかった。





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