第12話 報告
「鬼神くんごめん!かおる達にバレちゃた……」
私は喫茶店での話し合い(強制)の翌日、学校に着くとすぐさま彼に謝った。
「えっと……バレたって?」
「私が鬼神くん家に行ってる事……」
「あぁ、そうなんだ。別に気にしてないよ」
彼は優しく微笑んでくれたのだが、今回は私の自爆だから何にも言えない。
「桃宮さんが良ければ、犬飼さん達も誘っていいのに」
「それは……その」
「ふふ、あの場所がお気に入りなんだね」
彼は私の心を少しずつ理解してくれている。私の癒しの場に誰も立ち入らないで欲しい事も。
(自業自得なんなんだけどなぁ……)
「まぁ、あの場所は……好きかな」
「それは良かったよ。おばあちゃんとおじいちゃんが大切に育ててた木だからね」
「そうなんだ……」
「うん」
彼は遠くを見るような懐かしい顔をしている。その顔を自然と見つめる私もいる。そんな私は何を事思ったか、話題展開をしなければと焦りとんでもない事を口走って閉まった。
「お、お鬼神くんは大きい胸の女の人がいいの?」
「…………へっ?」
彼は私の言葉を理解してないような顔をしてこちらを振り返る。そんな私も何を言ってるんだと思うけど、口が勝手に動いてしまう。
「ほ、ほらだって……初めて会った時、わ、私の胸を見てたから」
「…………」
彼の顔をまともに見る事ができない。ここが教室だという事も忘れてしまっている。
チラリと彼の横顔を見ると、耳まで真っ赤に染まっていた。当然私の耳も同じ状態。
「……い、いやぁ……胸のあるなしは……その、関係ない……かな」
どこか歯切れが悪くても、精一杯答えてくれた彼に私は嬉しくなって……
「そ、そっか……」
この一言しか言えなかった。そして妙に気まずくなって、この日1日は彼との会話ができなかった。
(胸の大きさは関係無いか……)
学校からの帰り道、私は、「今日は行けないから、桃太郎によろしく」とだけ告げて足早に帰ってしまった。
◆
「ただいま〜」
「雪音おかえり!」
玄関をくぐるといつもは聞きなれない声が聞こえてきた!その声の主は……
「パパッ!」
私のはその声がパパだと気づくと鞄を置くのも忘れて駆け足でリビングに向かう。
「おう、雪音!元気にしてたか」
「うん!パパも元気にしてる?ちゃんと食べてる?寝てる?」
「はははッ……相変わらず心配性だなぁ雪音は」
私のパパは医者をしている。それで日本のみならず世界中でその腕を奮っている。その事が嬉しくて私の誇りで……
私は小さい時に大怪我した事がある。幸いパパが近くにいた幸運と医療機器が充実していたお陰で大事には至らなかったらしい……らしいと言うのは私の記憶が曖昧だからだ。
その事を家族に聞いても、すぐにはぐらかされてしまう。
「パパはいつまで居るの?」
「んん?やっと落ち着いて来たからな……暫くはこっちにいるよ」
「ヤッター!」
「雪音〜パパを独り占めしちゃダメよ?」
そう言ってママも輪の中に加わる。
「そう言えば兄さんと姉さんは?」
「あぁ、2人なら薬品関係の研究所にいると思うぞ?多分2人もその内帰ってくるだろう」
「そっか!」
それから私はパパとママと一緒に食事をして、悪友達の話や学校でのあれこれを語っていった。
2人は嬉しそうに私の話を聞いてくれている。私もそんな時間が楽しくて、つい彼の話をしてしまった。
「それでさぁ、その鬼神って子が私を見て泣き出したんだよねぇ」
「「……えっ?」」
2人は固まっている。私はそれに気付かずさらに話続ける。
「その鬼神くんがさ、犬におにぎりとかスナック菓子あげようとするんだよ?私ビックリしちゃって〜」
「……雪音、今なんて……」
「え〜、だから犬に……」
「いや、そうじゃない!その子の名前だ」
パパの真剣な表情に私は少し驚いてママを見る……ママもまた、同じような顔で私を見つめている。
「えっと……
彼の名前を言った途端に両親は、見た事ない表情をしながら席を立って、リビングを出ていった。
(私……なにかまずいことしたのかな……)
2人が戻ってくるまでの時間が私には永遠のように長く感じた。
ーーーーー
【あとがき】
感想お待ちしております。
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