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「……まあ、面白そうだ」

 犬飼が結局火を点けなかった煙草を齧りながら、歯の間から言葉を漏らした。

 義堂の目的を、殺人の部分はうまく割愛しながら、多賀の野望として犬飼に伝えた。

 安倉は、息を吐いて、犬飼の胸ポケットから携帯を取り出した。

「ん?」

 風貌通り、ガラケーだったので、番号を打ち、手渡す。

「やる気になったら、ここに電話しろ」

「いいのか、ここで離して。真相を知って、上に報告するかもしれんし、上がダメならマスコミに暴露するかもしれんぞ」

「上は、言ったように無駄だ。マスコミに言うようだったら、俺の見誤り。それまでの奴だった、ということだな」

 犬飼は沈思黙考している。

「もう少しだけ、お前は賢いと思ったがな」

 その言葉で、納得したようだった。

「俺の言葉だけで、証拠もないのにこんな突飛な話を信じるはずもない。それ以前に、警察にまで及んでいるお前らの影響力が、マスコミにも及んでいない、と考える方が野暮か。つまり、漏らした時点で、俺はお前に殺されるわけだ」

 おかしそうに口の端を歪め、犬飼が笑った。

「そこまで把握してるんだったら、仲間なんて必要なさそうだけどな」

「俺たちに利用されている時点で、仲間じゃない」

「……嘘に踊らされる側、か」

 犬飼は急に神妙になり、立ち上がった。尻をはたき、煙草を指で弾く。齧られてしなびた煙草は、回転しながら柵を飛び越え、アスファルトへと落ちていった。

「俺は、利用されるんじゃないのか」

「されないようにするんだよ、自分で」

 また、犬飼が笑った。

「最高だな。いいだろう」

 手を差し出す。安倉は無表情にそれを眺めてから、ふい、と顔を背け、扉へと歩き出した。

「なんだよ、つれないな」

 ズボンのポケットに手を入れながら、その後を追いかける。

 不思議なバディが、誕生したようだった。

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