②-1
2
「……まあ、面白そうだ」
犬飼が結局火を点けなかった煙草を齧りながら、歯の間から言葉を漏らした。
義堂の目的を、殺人の部分はうまく割愛しながら、多賀の野望として犬飼に伝えた。
安倉は、息を吐いて、犬飼の胸ポケットから携帯を取り出した。
「ん?」
風貌通り、ガラケーだったので、番号を打ち、手渡す。
「やる気になったら、ここに電話しろ」
「いいのか、ここで離して。真相を知って、上に報告するかもしれんし、上がダメならマスコミに暴露するかもしれんぞ」
「上は、言ったように無駄だ。マスコミに言うようだったら、俺の見誤り。それまでの奴だった、ということだな」
犬飼は沈思黙考している。
「もう少しだけ、お前は賢いと思ったがな」
その言葉で、納得したようだった。
「俺の言葉だけで、証拠もないのにこんな突飛な話を信じるはずもない。それ以前に、警察にまで及んでいるお前らの影響力が、マスコミにも及んでいない、と考える方が野暮か。つまり、漏らした時点で、俺はお前に殺されるわけだ」
おかしそうに口の端を歪め、犬飼が笑った。
「そこまで把握してるんだったら、仲間なんて必要なさそうだけどな」
「俺たちに利用されている時点で、仲間じゃない」
「……嘘に踊らされる側、か」
犬飼は急に神妙になり、立ち上がった。尻をはたき、煙草を指で弾く。齧られてしなびた煙草は、回転しながら柵を飛び越え、アスファルトへと落ちていった。
「俺は、利用されるんじゃないのか」
「されないようにするんだよ、自分で」
また、犬飼が笑った。
「最高だな。いいだろう」
手を差し出す。安倉は無表情にそれを眺めてから、ふい、と顔を背け、扉へと歩き出した。
「なんだよ、つれないな」
ズボンのポケットに手を入れながら、その後を追いかける。
不思議なバディが、誕生したようだった。
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