③-3
その時、北上が声を上げた。
「おい、これ!」
パソコンに映った映像を、北上が興奮して指差している。
それは無料映像配信サイトで、インタビューを受けている多賀翼の姿だった。
美しい瞳を真っ直ぐ向けて、これからやりたいことを語っている。
――義堂に助けられた自分は、義堂と同じようにしたい。
それは、まさに先ほど信藤が考えたこととまったく一緒で、思わず笑いが零れてしまった。
彼女の思考とそこまで近づけたことを素直に喜ぶべきか、それとも完全に騙され利用されたことを自嘲するべきか。
「配信元は?」
信藤の質問に、北上が首を傾げる。
「あなたの願いをすべて叶える、真実を科学する、真実の科学、って書いてあるけど」
リンク先があり、それを辿ると、シンプルで簡素なホームページが用意されていた。
「これは……新興宗教?」
もう、笑うしかなかった。腹を抱え、倒れこむ。
彼女を神格化したのは、信藤だ。
そこで、戦慄した。
彼女は、もうひとつやっていたことがある。期待に応えることで、人を形作る。もし、信藤自身もその影響下のもと、彼女にあの作品を書かされたのだとしたら。
どうして自分だけその影響から免れていると思った?
一体、どこまでが真実で、どこまでが嘘だったのだろう。
どこまでを、信藤は語らされ、騙らされたのだろう。
何ひとつ、わからない。
いや、ひとつだけわかることがあった。
彼女は、嘘をつくことに、取り憑かれている。人を騙し、魅了し、弄ぶことに、どうしようもなく惹かれている。
それを最も効率よく、大規模に、合法的にできるのが、自ら神となることだったのだ。
だが信藤だけは、知っている。
彼女は、神などではない。ただの
――嘘憑きだ。
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