楽しい楽しい修学旅行

「ここが今日お世話になるキビ農家さんの畑だぞー」


「「「「「おぉー!」」」」」


 すごい!ここ一面全部サトウキビなのか!


「これが全部砂糖に……!」


「ちよよんちよよん、表と裏が逆になってるぞ」


「おっと」


 でもあれだけあればどれくらいの砂糖が作れるんだろ……

 確か一本一キロ換算で取れる量が百十グラムくらいだから、もし一万本生えてるとしたら百十万キロの砂糖がとれて、今の砂糖で換算すると一キロ百五十円程度だから……一億六千五百万!


「あははははっ、花宮さんらしいっちゃらしいけどね」


「なんというか、ちよちーはどこまで行っても商売人って感じだよねぇー」


「知ってるか三人共、こいつ五歳になる前から嬉嬉として家の店の手伝い自分からしてたんだぜ?」


「ちょっ!礼二!余計なこと言わないでよ!」


「はーい静かに、農家さんの話をきちんと聞きなさーい」


 修学旅行二日目の朝、目の前に広がる広大なサトウキビ畑を前にそう賑やかに話していた俺達は、本日お世話になるサトウキビ農家さんの元へと学びに来ていた。


「喰らえ大和!斬鉄剣!」


「なんの!エクスカリバー!」


 勝者!……どっちだ?


「二人共ー、ちょうどいい長さなのは分かるけど遊ばなーい。えっと、これくらいでいいんだよね?」


「のはずー。持って行ってみようか。おじいさんすいませーん、これくらいでいいですかー……って、何やってるの叶奈ちゃん」


「肩揉んであげてたらお礼って貰ったんだー!二人の分もあるぞ!はいっ!」


「ありがとー……ってなにこれ?サトウキビ?」


 縦に切り分けてあるってことは……絞る前の奴かな?


 狩り終えた大量のサトウキビを抱え、農家のおじさんに渡そうとした俺達は、何故かおじいさん達の元に居た叶奈ちゃんから一節分の長さの切り分けられたサトウキビを貰う。


「そうだぞ!咥えて歯でしごくようにするらしいぞ!」


「ふむ……」


 まぁ砂糖の原料だし不味いという事はないだろう……


「んぐ……んっ!」


 こっ、これはっ!


 ーーーーーーーーーーーーーー


「これからも学んで言ってくださいね」


「講師の方ありがとうございました。はい皆さんもお礼を」


「「「「「ありがとうございましたー」」」」」


「お腹……空いたぁー……」


「んもぅ、いくら美味しかったからって、サトウキビでおなかいっぱいになってお昼ご飯抜かすからそうなるんだよ、ちよちー。博物館終わったし、はいあーん」


「あーん。ん〜チョコ美味し〜♪綺月ちゃん大好き〜♪」


「お前ら仲良いなぁ……」


 あの後、サトウキビ畑で砂糖の作り方を学んだ俺達はお昼ご飯を食べた後、戦争博物館へとやってきていた。


「にしても、戦争ってこんな凄かったんだな」


「ビデオ凄かったもんね。あんな場所に父様とかおじいちゃん居たのかなぁ」


「俺の親父も居たのかもしれないって考えるとなんつーか、他人事じゃない気がするよな」


「そっか、二人のお父さん達って戦争に行ってたもんね」


「そうだよー。だからか知らないけど私達姉妹にすっごい甘くて優しいよー」


「ウチは逆だなぁ。今でも休みの日はめっちゃ色々仕込まれる」


「がんばれいじ」


「まとめんな。所であの二人は?」


「神井君とかなちーは説明終わった途端外のパイナップル売りの所に走っていったよ」


「お小遣いもつのかなぁ……」


 叶奈ちゃんの家確かにお金持ちだけど隠し持ってくるにしても上限額があるだろうし……んまぁ気にしても仕方ないか。


「せっかくだし私達もあの冷やしパイナップル食べよっか」


 こうして自分の親達の過去に少しだけ思いを馳せた俺達は、二日目の予定もゆっくりとこなしていくのだった。

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