人生2度目の大規模イベント

 ついに来てしまった……


「この、人生で数回しか体験し得ない超大規模イベントが……!」


 夏休みも終わり、ほんのりと空気が冷たさを帯びてきたある日の夜、俺はいよいよ明日からのそのイベントにふんすと息巻いていた。


「よーちゃんの下着入れとくねー」


「あ、はーい。って何サラッとそんな凄いやつ入れようとしてんのさ!」


「いやー、旅行先でよーちゃんを大人にしてあげようかなって」


「要らんお世話じゃ。というか私みたいな身長だと、下着はこういった縞パンとかリボンがちょこっとあるみたいなやつの方が似合うの」


「それは男としての見解?」


「どちらかと言えば多分」


 正直体つきはともかく身長的にそういった大人ーな感じのって似合わないからなぁ……じゃなくて!


「そもそもこれは相応しくないでしょ!」


「でもほら、洋服でお洒落できない分こういった所で……ね?」


「所で……ね?じゃないわ!」


「んにゃあー!痛い痛いー!」


「二人共盛り上がってるねー……ってお?もしかして千代ちゃん、明日の準備?」


「ん、そだよー」


 きゃいきゃいと騒いでいたからか、そう言いながら俺の部屋に入ってきた千胡お姉ちゃんに俺は頷きながら千保お姉ちゃんの頭をグリグリとしていた。


「にしてもそっかー、もうそんな時期なのかー」


「早いよねー。もう修学旅行の時期だもん。」


 そう、千胡お姉ちゃんが言った通り明日から俺は二泊三日で一度の人生で基本三回しか参加出来ない大規模イベントである修学旅行へと行くのだった。


「目的地はー?」


「沖縄ー」


「あらっ、今どきじゃない。私は東京だったものね」


「えー!それじゃあウチだけ京都じゃーん!真面目じゃーん!」


「あはははは」


 まぁでも前世は京都行ったしなぁ。


「なんというか逆じゃない?」


「逆だねぇ」


「だねぇ」


「だよねぇ?!」


「んまぁとりあえず、後で千代ちゃんには私が使ってた日焼け止めあげるよ。この時期でもあっちは暖かいからねー、塗っとくだけ塗っとくといいよー」


「ありがとー」


 確かに沖縄だもんなぁ……塗っとかないと日焼けするかもだし、有難く貰っとこ。


「所でよーちゃん。沖縄でどこ見に行くのー?」


「えーっと確かー……戦争関連の博物館に水族館、あとは首里城とかの有名所だったかな?一日目は行って自由時間して寝るだけー」


「へー!水族館かぁ……羨ましいなぁー」


 そういや水族館って家族で行ったことないもんなぁ。


「それじゃあ千胡お姉ちゃんの分もお土産沢山買ってこなきゃね!」


「よーちゃん私の分のお土産もー」


「はいはい、忘れてないよー」


 純粋に羨ましそうな千胡お姉ちゃんの声色を聞き、そう意気込んで言った俺は横から千保お姉ちゃんに抱きつかれ、頭を脇腹にぐりぐりとされる。


「ふふふっ、でも水族館だから千代ちゃんの好きなシャチとかイルカの小物とかぬいぐるみ沢山ありそうね」


「!」


 確かに!


「でも買いすぎたらダメよ?高いし、ぬいぐるみはかさばるでしょ?」


「うぐぐ」


「まぁまぁ、かさばるのは仕方ないとして確かに持って行けるお金は決まってるけど、こうすれば……バレないでしょ?」


「おぉー!千保お姉ちゃん頭いい!」


 シャーペンの中に丸めて入れるなんて!


「ふっふーん♪これでよーちゃん心置き無く買い物出来るね!さてさてそれじゃあ……」


「えっ?」


「あっ、私もー」


「えっ?」


「明日からしばらくよーちゃん居ないから」


「今日は一緒に寝て、千代ちゃん成分たーっくさん補充しとかないと、ね?」


 いきなり俺の部屋の布団に入った姉達にそう言われ、俺ははぁっと軽くため息を着いた後仕方ないと二人の間に入って上げるのであった。

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