恒例行事

「夏休みも明日で最終日です」


「はい」


「私はせっかくだから最終日は二人で遊びに行こうと言ってました」


「……はい」


「ですが今私はその君と一緒に私の家に居ます」


「…………はい」


「さて、それは一体どうしてでしょうか?」


「……俺が宿題ほっぽらかして遊んでたからですっ!」


「正解!見事正解した愚か者には終わるまで逃がさない、宿題処理地獄をプレゼントしよう!」


 セミも大人しくなり始めた夏休み最終日の朝早く、俺は数週間前からの約束を破った愚か者こと礼二にそう言いながら、礼二の溜まりに溜まった宿題を広げてやるのだった。


「所でなんかやたらとイルカとシャチのぬいぐるみ増えてね?」


「うっさいさっさと宿題やる!」


「はいっ!」


 ーーーーーーーーーーーーーー


「ふぃー!何とか半分終わったぁー!」


「まだ半分、でしょ。でもまぁ、午前中だけにしては結構頑張ったじゃん。少し早めにご飯食べて一時くらいまで休憩にしよっか」


「よっしゃーい!にしても……やっぱ増えてるよなぁシャチとイルカのぬいぐるみ。散財したのか?」


「言い方よ。それに、増えた分は千保お姉ちゃんからこの間もらった奴と、それに抵抗して千胡お姉ちゃんが買ってきた物だし」


「へぇ。いいじゃねぇか、姉妹仲良しで。うちは最近優香が色々俺の物取って行ってなぁ……」


「あはははははは……」


 んまぁ、そのゆーちゃんが勉強の邪魔になると思って俺の家で勉強してるんだけどね。


 ため息をつきながらそういう礼二に、俺は苦笑いを浮かべながら例のお姉ちゃん達から貰ったぬいぐるみに抱きつきつつ、あの可愛い天使を頭に思い浮かべる。


「とりあえずご飯作るから、一階に戻ろうか」


「おう。でもよかったのか?」


「何が?」


「幼馴染とはいえその、俺は男だろ?その、お前は女の子なんだし、家にというか部屋に男を上げるのはその……」


「あー……」


 まぁそうだよなぁ……

 少なくとも叶奈ちゃんとか綺月ちゃんとか、お姉ちゃん達も家に男の人呼んでる所なんて見たことも聞いた事もないし、普通女の子はあんまり軽々しく家に男上げたりしないよなぁ。


「でもまぁ、礼二だしいっかなって」


「なっ、なんだよそれ」


「ふふっ、なんででしょーねっ」


 それに俺は別に純粋な女の子じゃないからね。これくらいどうとでもないのさ〜♪


 そう言うと俺はいたずらっ子っぽく礼二に向かってニッと笑いかけ、てってってと足取り軽く台所へと走り去っていくのだった。

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