お姉ちゃんの心

「はぁー……」


 ほんっとに心臓に悪かった……


「まぁ、週一のスイーツと未来の話で手を打ってくれるっていうのは俺としても助かるけど……にしても、まさか千保お姉ちゃんが大のオカルト好きだったなんてなぁ……」


 ぽふっとまだ少しだけ濡れている髪のまま布団に寝そべった銭湯帰りの俺は、あのお昼の出来事を思い出しながら一安心と言わんばかりにイルカのぬいぐるみを抱っこしてため息をついていた。


 天井板をずらすとそこには大量の月間マーがあるなんて想像できるかってーの。


「でも本当の事聞きたいからってお水に少しだけお酒盛るなんて酷いよねぇ?ほんと信じらんない」


「信じらんないついでにお姉ちゃんは如何かな?」


「うわぁっ?!びっくりしたぁ!」


 いつの間に布団の中に?!


「むっふっふー!よーちゃん脅かすためなら例え火の中水の中、よーちゃんのお布団の中へでもっ!」


「迷惑っ!」


「そんな事言わないでよーう。小学生までは殆ど毎日一緒に寝てたじゃーん」


「小学生までっ!小学生まではねっ!でも今はもう中学生なんだから!」


「だからなんだと言うのだね?そんな理由でちっちゃくて可愛くてちっちゃい妹を可愛がるお姉ちゃんを止める事はできぬぅ!」


「んなぁぁぁあ!」


 むぎゅうっといつの間にか俺の布団の中に忍び込んでいた千保お姉ちゃんに抱きつかれながら、俺は最初こそ抵抗していたものの暫くすると諦めて大人しく抱きしめられる。


「はぁ〜♪やっぱよーちゃんのお肌はつるつるぷにぷにで最高だぁ〜♪それにちょっと暖かいのも素晴らしい……」


「夏なんだから暖かい私じゃ無くて冷たい枕にでも抱きついてなよ」


「冷たいとお腹壊すからやだぷー。それによーちゃんサイズが一番落ち着く」


「私は抱き枕か……でも本当にいいの千保お姉ちゃん?私中身は男だけどそんなベタベタして……気持ち悪かったりしない?」


 無理して今まで通りに……とか。


「あのねぇ……もう何回も言ったでしょ?もしよーちゃんがガワだけ同じで中身が変わってたなら嫌だけど、二歳の時の記憶があるくらい生まれた時から同じ中身なんでしょ?」


「う、うん……」


「ならウチの知ってるよーちゃんはこのょーちゃんだもん。それなら別に全然嫌じゃないよ。どちらかと言えばよーちゃんこそこういう事されて嫌だったりしない?」


「うーん……昔は恥ずかしかったけど別に嫌ではなかったし、今もそこん所は変わらないけど…………わっ!」


 千保お姉ちゃんの問いかけに俺がそう答えているといきなり抱きついていた手を離し、ころんと俺を転がして自分の方に振り向かせるとじっとこちらを見つめてくる。


「うん、やっぱりよーちゃんは可愛い」


「い、いきなりなんだよぅ……」


「お肌も真っ白でつやつや、髪の毛も濡鴉って言えるくらい綺麗だし、女の子ですら憧れちゃう。だーかーらー……今日はお姉ちゃんが女の子を教えてあ・げ・る♪」


「そ、それってどういう……あっ、ちょっ、お姉ちゃっ!それはっ!」


「ふふふっ、よーちゃんったら慌てちゃって可愛いっ♪」


「あっ、あっ!あーっ!」


 こうして俺はこの日千保お姉ちゃんに正体が知られたと共に、女の子としての悦びをみっちりと仕込まれたのであった。










「ね?女の子もいいものでしょ?」


「うん〜♪えへへへへ……もふもふぅ……」


 千保お姉ちゃんの用意した沢山のイルカとシャチのぬいぐるみと小物によって。

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