夏のお勉強
「よーおちゃっ」
「ふにゃっ」
「なーにやってるのー?」
「おーべーんーきょーうー」
むにぃっと千保お姉ちゃんの柔らかいものを頭の上に感じながら、珍しく夏休み前にやりきれなかった宿題を終わらせようとしていた俺は、邪魔された仕返しに揉みしだきつつそう千保お姉ちゃんに俺は言う。
「やーん。よーちゃんのえっちぃー」
「それ以上ふざけるなら出ていって」
「ごめんごめん。でも珍しいねぇ、よーちゃんが宿題やりきれてないなんて。まぁ、健全な学生がやることじゃないと思うけど」
「健全な学生は毎年夏休み最終日に二歳も下の妹に宿題手伝ってって頼み込みに来ないと思うよ」
「うぐっ」
「学生の本分はお勉強なんだから、お姉ちゃんもたまにはちゃんとお勉強しなさいよー」
正直お手伝いするのは好きだけど勉強のお手伝いだけは色々な意味で勘弁して欲しいんだよねー。
「所でよーちゃん、あの後だけどさぁー」
「あの後?」
あの後って……どの後だ?
「礼二くんとは上手く言ってるのかい?」
「ぶっっっふっ!げほっ!ごほっ!いきなり何をっ?!というか上手くって何!?」
千保お姉ちゃんの唐突なその発言に、どの後かを思い出そうとコップに口をつけていた俺は、口に含んだ冷たい水を思わず吹き出してしまう。
「いやぁー、せっかくデートに行ったんだから上手くお付き合い出来てるかなぁーって」
「げほっ、けほっ!あーもう最悪!お姉ちゃんのせいでお水吹いちゃって机びしょびしょじゃん!マジで最悪!というか付き合ってないし!そもそもデートですらないし!」
「……ごめんごめん!えーでもー、そんなに凄い反応するなんて……ほんとは付き合ってたりするんじゃないのー?」
「しーまーせーんー!とりあえずお姉ちゃんは布巾持ってきて!」
「ひぃー!よーちゃんが怖いっ!すぐ持ってきマース!」
「ったくもう……今日はいつも以上にからかってくるなぁ……」
ほんと千保お姉ちゃんのこういう所は傍迷惑だ。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ふー、綺麗になったー!」
「元はと言えば誰かさんのせいだけどね」
「ダーレノセイナンダローネー」
「お前じゃーい」
「あいだだだだっ!グリグリっ!グリグリしないでぇー!」
掃除も終わり、グリグリと拳骨でお姉ちゃんの頭を左右から攻撃していた俺は、足をジタバタさせるお姉ちゃんにそう言われ、仕方ないと勉強に戻る。
「痛いなぁ……はい、ついでに持ってきたよお水」
「ありがとー」
「でもほんとよーちゃんって勉強家さんだよねー」
「そう?」
面倒事は先に済ませときたい派なだけだが。
「そうだよー。毎年ながーいお休みが来る度に配られた宿題全部終わらせてるし、それに毎日きちんと日記付けてる上にまとめなんてしちゃってる」
「えー」
「それにウチとかこーねぇにすら勉強教えれるくらい頭いいもん!」
「えへへへへ……そうかなぁ?」
「うんうん!もう本当に自慢の妹だよ!」
そう言って貰えるなんて嬉しいなぁ。顔にやけちゃうぞ!
前々からよくある事だが いつものようにお姉ちゃんにやんややんやと褒められ、俺はなんだかいつも以上に上機嫌になりニヤけ顔を浮かべてしまう。そして……
「それにそれに、自分のお店を持つつもりだったんでしょ?ウチそこまで将来の事考えた事ないよー」
「お姉ちゃんだって二年後は高校卒業するんだから、そろそろ考えなよー?」
「はーい、それでさよーちゃん。この「令和」って何かな?」
「あーそれ?それはねーこの先の時代の年号でねー……あっ」
「……前々からなんか変わってるとは思ってたけど。そういう事だったんだね、よーちゃん」
前世の記憶を忘れない為に色々と書き記した、俺の核心へと迫る秘密がぎっしりと残されたノートを持つ千保お姉ちゃんが、今の口を滑らせた俺の前には居たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます