お風呂と気付き
「ぷゆっ」
「お、どうしたの千代ちゃん?お姉ちゃんのお膝になんて珍しい」
「甘えたいお気分なのじゃ」
「あらあら〜♪」
いつもの銭湯にて三姉妹水入らずのお風呂タイムを満喫していた俺は、何となくそう言った気分になりちょこんと湯船に入ったタイミングで千胡お姉ちゃんの膝に座る。
「あ、いいなぁこーねぇ!ほらよーちゃん!ウチのお膝の上においで!そっちより柔らかいよ!」
「実の姉を千保ちゃんそっちって……さすがに酷いよぉー」
「むっふっふー。妹に愛されし姉こそが正義なのだ〜♪ねー、よーちゃんっ!」
「そんな事ないよー?私はお姉ちゃん達の事どっちも大好きだからー、どっちにも座るのー」
「いやったぁ!」
「えー!もう行っちゃうのー?」
名残惜しそうな千胡お姉ちゃんの声と視線を受けながらそう言って手を広げる千保お姉ちゃんの膝の上に座った俺は、後頭部に感じる確かな巨大物体に顔をほにゃらせる。
「なはは。すぐ戻るよ千胡お姉ちゃーん。ん〜♪やっぱこの最大サイズのスイカ位あるご立派なものは頭の置き心地が違いますなぁー」
これがまだ成長続けてるんだから恐ろしいものだ。
「やーん、よーちゃんのえっちー」
「うぇへへへへ」
いやぁー、こうやって甘えるのも本当に久々だけど、やっぱこのふわふわぷにぷにには無くなった相棒が心の中でまたそそり立つようなあの感覚が──────
「──────ない?」
いや、まて、というかそもそもそんな感覚自体がどんなのだったか……
「よーちゃん?」
「千代ちゃんどうかした?」
「う、ううん!なんでもないよー!」
どういう事だ?確かに前までは安心感とか気持ちよさとは別に何か……そう、最早本能と言ってもいいそういった、衝動的に感じてしまう何かが……
「……千保お姉ちゃん」
「ん?何かなよーちゃん」
「えい」
「ひゃんっ?!ちょっ、よーちゃんっ!?」
柔らかい、ぷにぷに、程よい抵抗……確かに触ってて心地いいけど……
「何か……何かが……」
「んんっ!よ、よーちゃぁん……」
そうだ、エロだ、エロいと感じてたんだ。だけどこれは……
「エロい?エロいのか?エロいってなんだ?」
いやエロい、ここまで大きいと普通にエロい、そうエロいはずなんだ。そう感じていた記憶が俺にはある、だから間違いは無いはずなんだ……だけど……
「よ、よーちゃんっ!そろそろやめないと怒るよっ!」
「あっ、ごめん」
「もー、いきなり二人でイチャイチャしはじめて。お姉ちゃん寂しいぞっ」
「あはははは、申し訳ない」
やっぱり、あれだけ揉みしだいたのに全くエロいなんて気持ちを感じなかった……むしろ感じたのは大きいなぁとか羨ましい、それだけだった……
「びっくりしたぁ……ほんと、いきなりどうしたのよーちゃん?」
たまたま取った行動から、自分自信の感性がいつの間にか変わっていた事に気がついてしまった俺は、その突然の気付きに思わず半分程放心状態でぼーっと手元を眺める。
「よーちゃんってばぁー」
「あ、ごめんごめん。そうだなぁー……んー……気の迷い?」
「なんだそりゃ!気の迷いでおっぱいだなんて、さてはよーちゃん男の子だな!」
「んなわけないじゃん、こんなにつるっつるなのに」
「そうだよ千保ちゃん。千代ちゃんももう思春期になってもおかしくないんだから、そんなからかい方してると嫌われちゃうよ」
「そっ、それはいやだっ!ごめんよよーちゃぁーん」
「大丈夫!怒ってない!怒ってないから!」
というか思春期ももう前世で一回体験してるんだ……か……ら…?いや、まて?思春期?思春期だと?
もしこの体の、女の子としての思春期っていうのに合わせて、俺の男女の価値観とか考え方とかそういったのが女の子の物になって成長して行ってるとしたら?
「もしかして俺……思春期?」
「え、なに?よーちゃん思春期なの?」
「お赤飯炊く?」
「いや思春期だからお赤飯ってなにさ……でも」
確かに体がきちんと女の子として成長し始めたのは最近だし……もし、もし本当にそうだったとしたら思春期が終わる頃には……
「俺は……俺なのか?」
暖かい湯気に包まれた中、そんな思考に陥った俺は自分を包むような悪寒を感じながら揺れる湯船の湯を眺めつつ、姉達に聞こえない声で小さくそう呟いたのだった。
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