まとめてカキカキ
キュポンッ
「んくっ……んくっ……んくっ……ぷはぁっ!」
く〜〜染みるっ!
朝のまだ少し寒い空気の中、届いたばかりのキンッキンに冷えた瓶の牛乳をいつものように眠気覚ましがてら半分程飲んだ俺は、それを持って部屋へと戻る。
「やっぱり美味しいんだよなぁこの朝イチに牛乳瓶をクイッとやるのが。もうほとんど朧げだけど、令和の頃に飲んでたパックの牛乳の数倍は美味い気がするもん」
っとと、牛乳を吟味してる場合じゃない。
「この為にせっかくの休みに早起きしたんだ。さっさと取り掛からないと」
最近お姉ちゃん達結構夜更かしするようになったから、朝早くじゃないとこんなの危なくて書けたもんじゃないんだぜ。
「さぁって、中学生になってからは初めての総まとめだ。少し時間かかるぞー」
そんな事を言いながら手早く髪の毛をまとめた俺は、女子にしては飾り気がないとよく言われる緑のシャーペンで見るなと表に書かれたノートに向かって書き出し始める。
「中学生になってから色々あったからなぁ……お姉ちゃん達はそのまま少し大人びただけだし、今回は学校方面の付き合いを書き出そうかな」
まずは長くなるあのメンツの前に前座としてそこそこの付き合いの子達から書き出して行こうじゃあないか。
「とりあえず初手は安定の神井君だね」
あいつ、あんなに目立つ見た目してて実際にイケメンモテモテなのになーんか俺の中で印象がうっすいんだよなぁ。
そんな圧倒的不名誉極まりないイメージを俺に持たれているのは「神井大和」、母方の祖父にイタリア人を持つらしいクオーターの金髪イケメンな男の子である。
初めてこの街に来たのは小学校五年生の夏休み明け程で、この街に転校して来た当初は初めてこの街で話した同年代が学校案内を任された俺という事でよく付きまとわれた。
あの頃の神井君すっごくウザかったなぁ……お店に強襲して来た時は本当に気持ち悪かったのを今でも覚えてるぞ……
まぁ俺の初めてのあの日と丁度ダブってたからなぁ……あそこまで酷い事言ったのは俺が悪いとは言わんぞ。
ま、その後イベントで仲直り出来たし、セーフでしょう。
ちなみに、最近の悩みは影が薄い事と女の子にモテすぎる事らしい。いつか天罰を下す。必ず下す、絶対下す。
「さて、続きましてはこの子かな?学校っていう面には関係ないけど、まぁいいでしょ」
正直ウチに来て欲しい、礼二の妹であり俺の妹のような存在「桜ヶ崎優香」ちゃん!
優香ちゃんは二年前の俺がまだ小学校六年生の頃に礼二のお母さんである優美さんがお腹に宿した天使であり、桜ヶ崎家の第二子の長女でもある二歳の女の子だ。
俺の幼少期を思い出すようなたどたどしい喋り方の至って普通の幼女であり、礼二の事をおにーたん、俺の事をちよねーたんと呼ぶ可愛さの権化である。
優美さんが忙しい時とか暇な時にしょっちゅう手作りお菓子持って遊びに行ってたらすっかり懐かれちゃったもんなぁ。
ちなみにもふもふも大好きなようで、誕生日に渡した手直しはしてある俺のお下がりのもふもふうさぎぬいぐるみをしょっちゅう抱っこしている姿が確認されている。
後は時々泊まりに行ってあげると大喜びするくらいかな?
本当に可愛いよなぁ……こればかりは女の子に生まれてよかったと心底思うぜ。
最近の悩みはお兄ちゃんが構ってくれないことらしい。
「っと、日も結構登ってきたな。そろそろ本命達を書き始めないと」
わかりやすいように書き出した人物のちびキャラなんかを描きつつやってたからか、窓からお日様が見える位の時間になっていたのを確認した俺は急いで残りを書き出す。
「ここはもう知り合ったタイミングも何かやる時も大抵一緒だしまとめて書いちゃおう」
そう言って俺がサラサラっとちびキャラを描き始めたのは「伊部叶奈」ちゃんと「宫神宮綺月」ちゃんである。
この二人はこの街の四季毎に行われるお祭りの内、春にある俺も小さな頃に参加した女の子が主役のお祭りで知り合った中の良い、親友と言っても過言ではない友達である。
懐かしいなぁ……あの頃はまさかこんなに長い付き合いになるとは思ってなかったよ。
少なくとももう十年以上の付き合いになるこの二人は、知っての通りこの街では有名な家の娘さんであり、その虎の威を借りるべくカースト上位勢がよく引き込みに来る。
それもそのはず、叶奈ちゃんはこの街で一番のお金持ちである伊部家の一人娘で、綺月ちゃんはこの街に一つずつしかない神社とお寺を経営する家の娘なのである。
「小学校の低学年の頃にこの二人目的で近づいて来た子にお説教してそれから小学生の間「女帝」なんて呼ばれてたりしたもんなぁ……あの頃は恥ずかしかったなぁ」
もし言われたら今でも恥ずかしいけど。っと、二人のちびキャラはこんなもんかな?ちびキャラとはいえ、小学校の頃とは二人共大きくなったよなぁ……
ちなみに最近の悩みは叶奈ちゃんが何処がするとは言わないがまた大きくなった事と、綺月ちゃんがまた身長が伸びたという事だ。呪……じゃなくて祝ってやりたい。
「俺も千保お姉ちゃんの妹なんだから、いつかは叶奈ちゃん位のおっ……じゃなくて、綺月ちゃん位の身長になれるはずだ。だから大丈夫、今は一番小さいけど大丈夫」
そんな風に自分へまだ希望はあると言い聞かせる様にブツブツと呟いた後、これからラストスパートとでも言うようにちびちびと飲んでいた牛乳を一気に飲み干す。
それじゃあ時間も時間だし、とりあえずこいつを書いて一息着くとするかな。
そう言って俺が描き出した他のちびキャラより大きなツンツン頭のキャラのモデルは「桜ヶ崎礼二」、先の二人より付き合いの長い前世の時代も含めた唯一無二の親友だ。
幼い頃からの俺による英才教育の賜物で元は優しいいい子だったのだが、最近どうやら反抗期に突入したようで何かと反抗してくる。
しかし元の優しい性格のせいか中途半端な反抗となりツンデレ属性を手に入れた。
前にテンプレの「別にお前の事なんて」ってのを言われた時はあまりのテンプレとそれを男が言ったって事で大笑いしたなぁ……
「ぷっ、くくくくくっ……今でも思い出すと笑えてくるや」
最近知った事だが、そんな礼二にもどうやら好きな人が居るらしく、結構長いことその子の事を気にして何度もアタックを仕掛けているらしい。
いつかその礼二の想い人とやらにも会ってみたいものである。
「私の礼二を惚れさせたんだ。どんな女か気になるじゃない」
ちなみに最近の悩みはその想い人さんが気がついてくれない事らしい。こいつも影が薄いんじゃないか?
「さぁって、とりあえずこんなもんかな?」
「朝ごはん出来ましたよー」
「はーい!」
見事に丁度書き終わったタイミングだったなぁ……よっし、それじゃあご飯食べに行くとしますか!
母様の朝ごはんが出来たという言葉を聞いた俺は、返事をしてからググッと伸びをした後ノートをとりあえず他のノートに挟んで隠し部屋を出ていくのだった。
「あ、あの子ったらまぁた扉閉め忘れてる。ったく仕方ないなぁ……ん?あれは……」
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