この世の真理
お姉ちゃんとは、いいものである。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!一緒に遊ぼー!」
「だめー!千代おねーちゃんは私と遊んでるの!」
「千代ねーたん、次僕と遊んでー」
お姉ちゃんという存在に位置するだけで、この愛くるしい己より幼き存在は全力で甘えてくるのだ。
「ちーねぇちーねぇ!みてみてかぶとむし!」
「千代ねぇ!コマやろ!コマ!」
「ねーね!お菓子!お菓子作ってー!」
だから敢えて私はもう一度言おう、お姉ちゃんとはいいものである。と。
ーーーーーーーーーーーー
「すー……ぴぃー……」
「むにゅう……」
「ぅんー……」
「くー……かー……」
「よし、任務完了」
なかなか手こずらせやがって……流石はお子様、元気の量が我々大人とは違い過ぎる。え?お前も子供じゃねーかって?ほら、中身は大人だから。
「あら、皆寝ちゃったの」
「はい、もう皆ぐっすりですよ峰子おばちゃん」
「みたいね。とりあえず千代ちゃん、皆の面倒見てくれてありがとねー。はい、これお駄賃とお盆のお小遣い」
「わっ!ありがとうございますー!」
母様の実家へと到着して約半日後、もう後一時間もすれば日も傾き始める時間帯、俺の周りにはさっきまで周りで遊び回っていた四歳から小学四年生くらいまでの小さな子達が皆揃って睡魔に撃沈させられていた。
「大切に使いなさいよー?」
「はーい!」
「よろしい。それじゃあこの子達はそっとしといて、私達はお茶でもしましょ。お菓子もあるし、来てるお母さん達だけじゃなくてお姉ちゃん達も皆居るから楽しいわよー」
ほほう……それはそれは。毎年の事ながら今年はどんなお菓子があるのか楽しみですなぁ。
「というわけでさらばお子様号達よ、私はお菓子を食べにゆく」
北大西洋の海底で深い眠りについておくれ。
そんなくだらない船に因んだ言葉をちびっ子達に残し、俺はその場でビシッと敬礼するとおばちゃんの後をてくてくとついて行き、毎年恒例お茶会の場である台所前の居間に向かう。
そして居間の戸を開けるとそこには、十五人、いや二十人は居るであろう、母様の実家である名家狭山家に名を連ねる女性達がそこには集まっていた。
ちなみに何故女性陣だけで集まっているのかと言うと、父様含む男性陣は勝負事にお酒にと大盛り上がりしてるからである。
「あらー!千代ちゃんお久しぶりー!」
「あらあら!千代ちゃんじゃない!可愛らしくなってまぁ!」
「千代ちゃん来てたのー!一恵さんも教えてくれても良かったじゃない!」
「すいません、ついお料理に熱中しちゃって。でも深山さん達千代にずっと構っちゃうから、ちょっと秘密にしてみたの」
「んまっ!酷いわ一恵さん!でも千代ちゃんにずっと構っちゃうのは事実ね!」
「「「「「あっはっはっはっはっ!」」」」」
流石おば様達……女三人寄れば姦しい、四人寄ればやかましいと言うのに、こんなに揃いも揃えばもう手が付けられない……
そんな謎の盛り上がりを見せる親戚のおば様達のやり取りをひとしきり聞き終えた俺は、早い所危険な領域から脱するべくそそくさと学生の女の子達が集まっている場所へ向かうのだった。
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