夏休みの大型イベント

 夏休みも中盤を少しすぎお盆を目前に控えた八月の頭頃。


「美味しい美味しいたこ焼きだよー!」


「さぁ見てらっしゃい!龍に狐に色んな形の飴だよ!」


「犯罪的な美味さ!キンッキンに冷えたラムネだよー!」


 この街の中心を流れる川の横にある大通りには……


「ジャンケンで勝てばもう一本!」


「祭りの定番!焼きそばだよー!今なら肉多め!」


「兄ちゃん惜しい!もっと角!角を狙って!」


 数々の紅く光る提灯と赤青黄色と様々な色の屋台が並び……


「お嬢ちゃん三等おめでとう!ほれ、ぬいぐるみだ!」


「ククク、下手だなぁ……金魚はこうやって掬うのさ……」


 屋台からの一喜一憂楽しげな声が響き渡っていた。

 そう、今日は季節毎に一度の、しかも夏特有の人々が開放的になるという、季節毎の祭りでも最も賑わう夏の祭り……


「「「「「いらっしゃいいらっしゃい!」」」」」


「さ!皆今年もたのしもうか!」


「「「おう!」」」


 盆祭りなのである!


 ーーーーーーーーーーーー


「いやー、凄かったな!お化け屋敷!」


「ね!去年来た時よりも怖くなってた!」


「途中後ろから追ってくる時なんて凄かったよなぁー。でもまぁ、約一名には刺激強すぎたみたいだが……」


「おばけなんかこわくないおばけなんかこわくないおばけなんかこわくないおばけなんかコワクナイオバケナンカコワクナイオバケナンカコワクナイオバケナンカ……」


 ぴーひゃらりーと祭囃子が少し遠くから聞こえてくる中、普段は公民館であるお化け屋敷の出口付近で俺は三人の視線を受けつつ、自分にそう言い聞かせていた。


「オバケナンカコワクナイ……よし!」


 おばけなんかこわくない!おばけなんかいないっ!


「お、復活したか千代」


「うん!なんとか!お化け屋敷の中じゃ迷惑かけてごめんね?」


「い、いや。気にしなくていい、千代がお化け屋敷苦手なの知ってるしな」


 ずーっと後ろから肩掴んで下向いて歩いてたから絶対歩きにくかっただろうに……


「優しいなぁ礼二。それに比べてそこの二人は……」


「「うっ」」


「なーにが楽しい場所だ。わざわざ目隠しまでして連れて行くと思ったらこんな場所」


「だ、だって……こうでもしないとちよよんお化け屋敷絶対入らないし」


「でもお化け屋敷でもないとちよちーの怖がる姿見れないし」


 なんじゃそりゃ、それって結局俺がワーキャー言うの見たかっただけじゃんか!いやまぁ見事に叶えてしまった訳だけども。


「と、とりあえず次行かない……?ほらちよちー、チョコバナナ一つ買ってあげるからさ」


「か、叶奈もたこ焼き一つ買ってあげるぞ!」


「はぁ……仕方ないなぁ。許してあげる」


「「!」」


 せっかくの様々お祭りなのにいつまでも拗ねてたら勿体無いからね、でも……


「飴細工と型抜きも、ね?」


「「は、はーい」」


 これくらいは要求しても文句無いよね?


「やっぱ千代って大人だよなぁー」


「ふふふっ、そーでしょー」


 そう俺は二人に要求を通した俺を見て言葉を漏らした礼二にそう返すと、カランコロンと下駄を鳴らしてようやく日の暮れ始めた街を歩き始めるのだった。

 そう、祭はまだ始まったばかりなのである。

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